蒼純の視線が、茶碗を持つ白哉の左手に向けられた。まだ幼い手の、白い人差し指に巻かれた包帯が原因だろう。普段はめったに寄ることのない皺が眉間に刻まれる。
「白哉、その人差し指はどうしたんだい?」
「え……あ、これは……」
言いよどむ白哉に疑問を感じ、蒼純は自分と同じ桔梗色の瞳を覗き込んだ。何かを隠していることは明白だが、それが何なのかはわからない。いったい何を隠す必要があるのだろうか。
蒼純が黙ったまま自分を見つめていることに気づいた白哉は、目を泳がせながら「実は……」と口を開いた。
「棘が刺さってしまって」
「棘?」
「はい。柘榴の木で」
間抜けな失敗だと思っているのだろう。少しばかり顔を赤らめ、小さな声で白哉は告げた。
「柘榴か……」
「はい。申し訳ありません」
「なぜ謝る?」
「……みっともないところをお見せしました」
「おやおや」
何を言い出すかと思えば、この子は本当に生真面目で不器用だ。自分がそんなことを思うわけがないと、そろそろ知ってもらいたい。
ふう、とため息をつき、蒼純は困ったように笑った。
「気にする必要などない。お前は少し生真面目すぎるよ」
「……そうでしょうか」
首を傾げる白哉に、ひとつ頷きを返した。
さて、可愛い息子の指に傷をつけた柘榴は、いったいどうしてやろうか。蒼純はそっと庭の方へと視線をやるのだった。