千本桜と袖白雪の関係に他の斬魄刀たちが興味を示し出したのは、つい最近のことである。以前から気にはなっていたのだが、きっかけはやはり、あの主従写真集騒動の一件からだろう。

「てなワケでさ、超怪しい二人の関係を探りましょうよ」
「面白そうですね!」
「いやいや、てめえらは何を見てたんだよ。明らかアイツらはそういう関係だろうが」

 灰猫と飛梅に風死がツッコミを入れる。
 あの一件で、二人の関係は斬魄刀たちの間にも瞬く間に広がっていったのだ。何も今さら二人の関係に疑問などわかないだろうと、風死は呆れたようにため息をついた。

「それはそうだけど……やっぱり気になるでしょ。あの二人がどんな感じなのか!」
「別に気になんねえよ」
「私は気になります」
「あたしもー!」

 ケッ、と風死が顔をそらせば、飛梅と雀蜂が灰猫に同意の声をあげた。やはり女子というものは、こういった類の話が大好きなのだろう。それは死神にも人間にも、斬魄刀にも言えることのようだ。

「そうだね……僕も気にはなるかな」
「おいおい、マジかよ」
「だって千本桜と袖白雪だろう? あの二人が並ぶと美しいじゃないか。ま、僕には及ばないけどね」
「……こンのナルシスト野郎が」
「何か言ったかい?」
「何でもねえよ!」
「くあぁ……うるせえな」

 瑠璃色孔雀と風死を眺めながら、鬼灯丸は大きな欠伸を漏らした。その隣では、静かに氷輪丸が佇んでいる。

「それにね、袖白雪と一緒の彼なら、仮面を外すかもしれないだろう?」
「ハァ?」

 瑠璃色孔雀の言うことが理解できず、風死は首を傾げた。クスクスと笑いをこぼし、瑠璃色孔雀は何かを思い出すように視線を右上に上げながら言う。

「千本桜の素顔はまだ見たことがないからね、きちんと見てみたいんだよ」
「あの写真集に載ってただろうが」
「半面だけね。で、その半面が予想外に美しかったから、一度しっかり見てみたいのさ」
「それわかる!」
「あたしも見てみたいもん!」
「わかるか、鬼灯丸」
「いや、わからねえ」

 うんうんと頷く灰猫や雀蜂を横目に、風死と鬼灯丸はうんざりとした様子だ。

「そういえば、今日の昼から千本桜と袖白雪は二人で出かけるみたいだぜ? なぁ、猿の」
「うむ。確か隊舎でそう言っておったな」
「うっそ、ナイスタイミングじゃない!」

 パチン、と指を鳴らし、灰猫が満面の笑みを浮かべる。この笑みの意味を悟った風死や鬼灯丸は、「ゲ……」と顔を歪めた。

「よーし! 二人の跡をつけるわよ!」
((やっぱりな……))

 予想通りの言葉に、二人はがっくりと肩を落とした。こうなった灰猫は、もう誰にも止められない。

「楽しそうね!」
「私たちも行きます」
「僕も行くよ」
「もちろん、アンタたちも行くわよね?」
「どうせ拒否なんかさせねえくせによ」
「まったくだ」

 無駄な足掻きだとわかっているのか、風死と鬼灯丸は存外あっさりと了承した。しぶしぶではあるが、やはり二人も少しは千本桜と袖白雪の関係をその目で確かめてみたいのだ。

「でも、止めといた方がいいと思うけどなァ」
「千本桜に見つかって、ただで済むとは思わんがのう」

 見かけによらず、実はかなり短気な千本桜だ。
 蛇尾丸たちはいつぞやの出来事を思い出し、遠い目になった。他の斬魄刀たちはわけがわからず、不思議そうに二人を見つめる。

「ともかく、オイラたちは止めとくぜ」
「あんな目に遭うのは二度とごめんじゃからな」

 食い尽いてくると思っていた蛇尾丸たちが乗ってこなかったことに灰猫たちは驚くが、胸の前で腕をクロスさせてバツマークを作っている二人を見て、それ以上誘おうとはしなかった。それに尾行するのだから、あまり大勢で行くのはよろしくない。

「……となると、鬼灯丸は少し図体が大きすぎるよね」
「そうねぇ。じゃあ今回は留守番ってことで」
「構わねえぜ」

 そこから話は着々と進んでいった。
 千本桜と袖白雪を尾行するのは、おそらくかなり苦労するだろう。特に千本桜は主があの朽木白哉なだけあって、霊圧や気配に人一倍敏感である。その千本桜に気づかれないためには、よほど上手く霊圧を消さなければならない。

「って言ってもねぇ……僕らがいくら霊圧を上手く消したとしても、千本桜には気づかれちゃうと思うよ」

 瑠璃色孔雀の言葉に頷く面々。そこで、意外な人物が考えを出した。

「疋殺地蔵にでも頼んで、霊圧制御装置のようなものでも借りればどうだ」

 氷輪丸が真面目に出した考えには、他の斬魄刀たちも多少驚く。だが、灰猫は顔を輝かせて手を打った。

「それいい!」
「いやいや、やりすぎだろ」

 さっきから灰猫にツッコミっぱなしの風死は、何だかお疲れ気味のようだ。それを憐れに思う鬼灯丸は、ポンポンと肩を叩いてやる。

「だが、やるならば徹底的にやるべきだ」
「そうよね! さっすがダーリン、話がわかるぅ!」
「では早速技術開発局に向かいましょう」
「ふふ、本格的になってきたね」
「隠密機動みたいね、あたしたち!」
「……お前ら、あの二人に恨みでもあんのかよ」

 そっとしといてやれよ……と、風死は珍しく千本桜と袖白雪に同情した。
 それから一刻後。
 疋殺地蔵から借り受けた霊圧制御装置を腕にはめ、なぜか妙にやる気満々な斬魄刀たちは、十三番隊隊舎付近で千本桜を待ち伏せしていた。蛇尾丸たちの話では、千本桜が袖白雪を迎えに行くらしいのだ。

「紳士なとこもあんのねぇ」
「きっと袖白雪限定だよ」
「いいなぁ、あたしもそういうの憧れちゃう」
「やっぱり殿方はこうでないといけませんね」
「……」
「俺、何かすでに疲れてんだけど……」
「あ! 来た!」
「袖白雪も隊舎から出て来たね」
「よーし、あたしたちも行くわよう!」

 灰猫、瑠璃色孔雀、雀蜂、飛梅、氷輪丸、風死。以上六名での千本桜と袖白雪の追跡が始まった。

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