春の麗らかな日差しが気持ちのいい午後。斬魄刀反乱事件も一段落したところで、女性死神協会は久方ぶりの会議を行っていた。

「――というわけで、せっかく斬魄刀が実体化しているんですから、これを利用しない手はないでしょう」
「どんなふうに利用すんの?」
「あっ! 斬魄刀と持ち主の主従で写真集ってのはどう?」
「それです! 松本さん、ナイスアイデア! 珍しい!」
「七緒、最後の余計なんだけど」
「でもそれいいと思いますよ、乱菊さん」
「でしょ! せっかくだしあたしたちも出しましょうよ、雛森」
「え!? 私たちもですか!?」
「砕蜂隊長も協力してくれますよね?」
「私は写真集なんぞ出さん」
「……夜一さんが砕蜂隊長の写真集、見たいって言ってたのに」
「ぜひとも協力しよう」

 かくして、斬魄刀と持ち主の主従写真集の発売が決定した。今回は女性死神も参加だが、そこは問題ない。彼女たちは自主参加であり、これからの女性死神協会のためを思ってのことなのだ。……きっと。

「問題は他の人たちですね。……特に隊長格」
「日番谷隊長と氷輪丸のはあたしに任しといてちょうだい! 同じ屋根の下にいるんだから簡単よ」
「私は京楽隊長たちにお願いしてみます。きっと協力してくれると思うんで」
「じゃあ、私は阿散井君たちに頼んでみますね」

 思っていたより、計画は順調に進められていく。
 乱菊が日番谷と氷輪丸を、七緒が京楽と花天狂骨、雛森が恋次と吉良と檜佐木の主従、清音は浮竹と双魚理にお願いすることになった。そこに乱菊と灰猫、雛森と飛梅、砕蜂と雀蜂の写真集も加わる。

「そうだ、朽木にも頼んでみる?」

 思いついたように提案する乱菊に、他の女性死神は首を傾けた。

「ルッキーに〜?」
「そっ。だって朽木の斬魄刀って、尸魂界で一番美しいって言われてるじゃない? これは売れるわよ!」
「確かに……では、朽木さんにもお願いしてみましょう」
「ルッキーならきっと頷いてくれるよ!」
「そうねぇ……問題は朽木兄なのよ」

 乱菊の呟きに、一同は深く頷いた。以前の朽木白哉写真集を発売するまでの苦労を思い出す。全員が遠い目になった。

「でも、朽木隊長の写真集の儲けはすごかったわよね〜」
「そうですね。今回も発売までこじつけましょう!」
「だが、朽木の斬魄刀も守備の固そうな奴だったぞ」
「ああ、千本桜ですね」

 面頬をつけ、決して素顔を見せようとはしない桜の名を持つ斬魄刀。確かに、主人と似てガードは固そうだ。

「あ!」
「どうかしましたか? 松本さん」
「あたし、ちょこっとだけ素顔見たわよ! ね、雛森!」

 話を振られた雛森は頷き、そのときのことを思い出す。あのときはいろいろと大変だったが、確かに仮面の下を見た。

「左目部分だけでしたけどね」
「一護が割ってくれたのよ〜」
「で、どうだったんですか?」

 もったい振るような乱菊の言い方に、七緒が尋ねた。聞いたのは七緒だったが、他の女性死神も気になるところらしく、乱菊の言葉の続きを待つ。

「もっちろん、朽木隊長の斬魄刀ですもの。かなりの美形っぽかったわよぅ」
「美形主従ならなおさら、写真集を出す必要があります!」
「でも誰が写真撮ってくるのよ?」

 乱菊が誰ともなしに聞く。すると突然、「はーいっ」と、女の返事が聞こえた。

「あたしたちが千本桜の写真、撮ってきてア・ゲ・ル」
「期待しててくださいね」

 どこからともなく現れたのは、乱菊と雛森の斬魄刀である灰猫と飛梅だった。二人はふふっ、と不敵に笑う。

「あんたたち、何でここにいんのよ!?」
「細かいことは気にしな〜い。それより、あたしたちに任してくれんの?」

 灰猫があたりを見渡し、首を傾ける。飛梅も隣でにこりと返事を待っているようだった。

「大丈夫なの、飛梅?」
「任せてください!」
「あたしたちもあの仮面の下、すっごく気になるのよね!」
「そうなんです!」
「いろいろ試したんだけど、アイツってガード固すぎて見れず終いなわけ」
「お風呂場でもつけてましたもんね」

 この二人何やってんの……と、乱菊と雛森が肩を落とした。
 灰猫と飛梅にもビックリだが、千本桜の固すぎるガードにも女性死神たちは少し身を引く。これは絶対に任せた方がいい、と全員の心が一致した。

「じゃ、お願いするわ」
「任しといてッ!」
「あんまり無茶しちゃ駄目よ?」
「はい! 行ってきます」

 シャランと鈴を鳴らし、飛梅が先に出て行く。灰猫もそれに続いた。

「大丈夫かなぁ」
「まっ、平気でしょ」

 千本桜の写真は、ひとまず二人に任せることに決まった。残るはその主の方だ。

「朽木はどうする?」
「はぁーいっ! びゃっくんの写真はあたしに任せて!」

 ぴょんぴょんと手を挙げながら跳ねるやちる。どうやらやる気は満々らしい。

「大丈夫なの? あんた、またいつもみたいに金平糖で追い出されるんじゃない?」
「ふっふふー! 今回はつっよーい助っ人がいるんだよ!」
「強い助っ人?」
「うん! ね、副会長。あたしがびゃっくんの写真をうまく手に入れたら、たぁーくさん金平糖買ってくれる?」
「え? ……ええ、そうですね。山のように買いましょう」
「やったー! じゃ、あたしも行くね!」

 やちるは現世で調達したカメラを首にぶら下げ、「楽しみにしといてー!」と叫びながら、びゅばあっと駆け出した。あっという間に見えなくなる桃色の姿。その速さに全員が唖然とする。幼子といえど、さすがは十一番隊副隊長だ。

「……でも、強い助っ人って誰?」
「さあ」
「期待せずに待つことだな」
「そうですね。私たちも行きましょう」

 大きな不安を胸にしまい、他のメンバーもようやく動き出す。目指すは女性死神協会の資金、半年分だ。……無駄遣いもふくめて。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -