目の前で風流に月を眺めていた死神を真っ正面から見た瞬間、僕はなぜか「月だ」と、そう感じた。初対面であるはずの彼に、なぜそんなことを思ったのかはわからない。ただ、月を眺めている彼こそが月だと、直感的に感じたのだ。

「――私は、兄の戦いを厭悪する」

 そう言った彼の目は鋭く冷たい。向けられた視線は、まっすぐに僕を捉えている。
 ああ、嫌われちゃったかな。

「自らは手を下さず、絆を奪って敵をなぶるとは卑劣の極み、死すべき無恥だ」

 なるほど。彼は見た目よりずっと熱い性格のようだ。何となく、僕と彼は近いものがありそうだな、なんて思ったんだけど。残念だね。

「かかって来るが良い」

 どこまでも上から見下ろすような物言いと視線。

「兄が一太刀を振り終える前に、私は兄を斬って捨てる」

 ……面白い。彼の言動のひとつひとつから、そのプライドの高さや気高さが伝わってくる。まさに月だ。
 でも、その態度がいつまで続くかな? 僕は本気で君に挟みにいくよ。その自信に満ちた目を、失望と絶望で満たしてやりたい。
 ――だって、堕ちた月ほど風流なものはないだろう?
 まだ名前も知らない死神に、僕はこっそり口角を上げた。




──────────
moon,moon,moon

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -