四楓院夜一と浦原喜助が尸魂界を永久追放された。それを私が知ったのは、つい三日前のことだ。

「嘘、ではないのですか……」
「確かに信じられぬことかもしれぬが、嘘ではない。四楓院夜一と浦原喜助は、この尸魂界から永久追放されたのだ」

 爺様の声が、どこか遠くに聞こえる。それでも私の耳にはしっかりと届いていた。
 ――四楓院夜一と浦原喜助は、いなくなったのだ。
 この尸魂界から。護廷十三隊から。私の、周りから。
 その日以来、私の髪紐が減ることはなくなった。鍛練の邪魔をしに四楓院夜一が屋敷へ現れることも、妙な研究品を持って浦原喜助が屋敷へ現れることも、もう二度とない。鬼事も、それ以来することがなくなった。

「……くそっ……」

 自室で一人書き物をしていた私は、目の前の紙をぐしゃりと握り潰した。自分でしたことだというのに、なぜか胸が痛んだ。
 二人が私の周りからいなくなったことは喜ばしいことではないのか。子供扱いされることも、変にからかわれることも、鍛練の邪魔をされることも、すべてなくなったのだ。
 ――なのに、なぜ……

「こんなにもっ……心乱れる……!」

 認めたくはない。認めたくはないが、夜一と浦原の存在は、私にとってとても大きなものになっていたのだ。
 二人が周りからいなくなったことを、私は嘆いている。哀しんでいる、悔いている。心の底から。
 もちろん、掟を破った彼奴らの行いは決して許されるものではない。ましてや夜一は、四楓院家の当主だ。誰よりも守るべき秩序を乱してはならぬ。
 そう、頭ではわかっている。しかし私の心は、そんな掟や秩序よりも二人の存在の方が遥かに大きいことを知っていた。掟や秩序など、今はどうでもいい。子供だと言われても、次期当主失格だと言われても構わない。
 ただ、二人に帰って来てほしかった。

「あの、馬鹿者どもめっ……」

 きつくきつく拳を握る。
 何も言わずにいなくなるなんて、そんなのは反則だ。私はまだ貴様らに、何も告げていないではないか。
 もう一度だけ。もう一度だけ、その憎らしい笑みを私に見せに戻って来い。そうすれば、今まで一度も告げられなかったたった一言を、貴様らに告げてやる。

「……礼くらいっ……言わせろ……!」

 静かに頬を伝った一筋の線は、私が初めて見せる二人への素直な気持ちだった。




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たった一言すら

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