暖かくなったと思ったら急激に寒くなったこの日。
名前は風介の部屋にいた。
冷たい容器から滴り落ちるそれが手を、膝を濡らす。
「冷たい」
「アイスだからね」
「アイス揚げるのもあるじゃん」
「それは一般的ではないだろう」
机の上にはすでに空になった容器が2つほど転がっている。
「うー…寒い」
身震いをしながら一口、また一口と食べ進める。
「3つもアイスを食べれば寒くもなるよ」
「風介も食べてるのに寒くないの?」
「ふっ、凍てつく闇の冷たさに比べればこんなもの」
「はいはい」
厨二病乙、
と言ってやるが効いている様子は全くない。
元は上司
今は彼氏
よくこんな厨二と付き合っているなと思ってしまう。
「あーなんか寒さが増した気がする」
「そうか。なら」
遠くも近くもない距離だが隣にいた彼が動く音。
すっと後ろから抱きすくめられる。
「…なにごと?!」
「寒いのだろう」
ああ、こう言う所に惚れたのか。
心拍数が上がりに上がっているのは抱きしめる彼にも気づかれているだろう。
寒さなど忘れてしまうくらい火照る。
手の中の溶けかけのアイスを少し食べてやっと元に戻れた気がした。