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夏組の第1回公演が終わった後も私はたびたびMANKAI劇場に通った。三角くんはここの劇団員らしいし、外で会うよりは遭遇率が高いと思ったからだ。同じ劇団の舞台なら、都合が合えば見に来るんじゃないかって、小さな期待からだった。
座席で開演を待っていると、頭上から「あ」と聞き覚えのある声がした。顔を上げると、そこには三好くんが立っていた。なんだ、三角くんじゃないのか、なんて三好くんのファンの人に怒られちゃう。三好くんでも会えただけラッキーだよ、うん。
「君、夏組公演来てた子だよね。カテコでいつもすみーに熱烈な視線送ってた」
周りからはそう見られてたのかと少し恥ずかしくなる。小さく頷くと、やっぱり〜!と彼は笑った。
「この後すみーも来るよん」
「えっ」
「あ、かずいた〜」
聞きなれた、大好きな彼の声にびくりと体がはねる。バクバクとうるさいくらいに心臓が騒ぎ出して落ち着かない。
「あ、すみーこっち座って!」
「うん、わかった〜」
さっきまで隣にいた三好くんが立ち上がり、三角くんが隣に腰掛ける。あぁ、ほんと心臓うるさい。三角くんに聞こえちゃうんじゃないかって、すごく心配になる。三好くんはなんだか楽しそうに笑ってる。
「あ〜! 今日も来てくれたんだ〜!」
ありがとうと笑う三角くんが眩しい。三角くんの目に自分が映ってると思うと、上手く声が出なくて、あの、とか、えっと、とか、気持ちとは裏腹に言葉が詰まる。
「あ、そろそろ始まるよ〜」
開演のブザーと共に前を向く三角くん。私も舞台へと目を向ける。それでも視界の端に三角くんを見てしまう。
神様、どうかこの時間が永遠になりますように。