天然育ちの翠の花(土沖♀/試衛館時代)




「それで?実際に子供っていうのはどうすれば出来るんですか?」

「あ、いや・・・それは、だなぁ・・・・・・。(おい左之、お前こういうの得意だろ?!)」

「こうやってまじまじ聞かれちまうと、どうにもこうにも・・・(俺に振るなよ!!お前だって説明くらい出来んだろうが!!!)」

困惑した視線を投げ掛け合いながら会話をする永倉と原田の二人。
すると中々本題に入ってくれない二人に業を煮やしたのか総司はくるりと踵を返す。

「教えてくれないならもういいです、土方さんに直接聞いてきますから。」

「ちょ、ちょっと待て・・・総司!!」

制止の言葉も聞かずに総司は小走りで広間から出て行ってしまった。向かったのは土方の自室だろう。

届かず空を切った手をそのままに二人は先程とは別の意味で身体を硬直させる。そして脳裏に過ぎったこの先間違いなく起こるであろう光景にみるみる顔を青くした。

「・・・・・・なぁ新八、この展開・・・すげぇまずくねぇか?」

「き、奇遇だな左之・・・俺も今同じことを思ったぜ。」

事の経緯を知らぬ土方にいきなりあんな質問をぶつければ、たとえ本人にその気が無くとも誘われていると思うに違いない。

総司が土方に対して密かに想いを寄せているように、土方もまた総司に対して特別な感情を抱いている。
これを好機とばかりに土方が何も知らない総司を手籠めにしてしまうような事態となれば、自分達は近藤に対して申し訳が立たない。

「そ、総司・・・!!お前、待ちやがれ・・・!!!」

「おい、平助・・・!!いつまでも固まってねぇでお前も来い!!」



自室で俳句作りに精を出していた土方はパタパタと近づいてくる足音に気付き顔を上げる。
そして次の瞬間何の断りも無く軽快に開かれた障子戸に大きなため息を吐いた。

「土方さん、土方さん。」

「おいこら総司、開ける時はちゃんと声を掛けてからにしろっつって・・・・・・」

「僕、土方さんに教えてもらいたいことがあるんです。」

障子を開け放したまま総司が駆け寄ってくる。傍に座ると間髪いれずに再び口を開いた。

「土方さん、赤ちゃんってどうやったら出来るんですか?」

「なぁ?!!」

「土方さんなら知ってるんでしょう?」

さすがの土方もこの質問には驚きを隠せないのか、先刻の永倉達と同じように身体の動きを止める。
手に持っていた筆がポロリと畳の上に落ちた。

畳に手をつきながら総司は上目遣いで土方を見る。
体制のせいでゆったりと着こなされた着物の隙間から女性の証である控えめな膨らみが微かに覗き、土方は不覚にも己の下半身がじわりと疼くのを感じた。

(一丁前に誘ってやがんのか・・・?いやいや、そんな芸当がこいつに出来るわけ・・・・・・。)

「土方さん?」

心の中で葛藤を繰り返す土方に追い討ちを掛けるが如く、総司は小首を傾げ翡翠の双眸をパチパチと瞬かせる。
その愛らしい仕草が決定打となり土方の理性は脆くも崩れ去った。


「・・・子供の作り方が知りてぇんだな?」

「はい。」

「なら実践で教えてやる。」

「あっ・・・。」

両肩を掴んで総司の身体を押し倒すと覆い被さるように土方はその上に跨る。
そして何が起きたのかわからず呆然と天井を仰いでいる総司の唇に自分のそれを重ねると、味わうように何度も何度も啄ばみながら柔らかな感触を味わった。

長いようで短い初めての接吻が終わると、至極驚いたような表情で総司は目を丸くする。

「お前のことだから意図して言ったんじゃねぇんだろうが、『据え膳食わぬは何とやら』とも言うしな。まぁ心配すんな、じっくり時間を掛けて手取り足取り教えてやるからよ。」

「え・・・あの、土方さん・・・?」

「色々工程をすっ飛ばしちまうことにはなるが、この際それは後回しでもいいだろ?」

「それ、どういう意味・・・・・・?」

「身体から始まるお付き合いってのもありだってことだ。」

上機嫌に笑うと土方はそのまま総司の首に顔を埋めた。



数分後・・・駆け込んできた永倉・原田・藤堂の三名によって土方の身体は無理やり引き剥がされ、総司は貞操の危機を何とか回避することが出来たらしい。


― fin ―

2011.10.07



[ 38/202 ]

[*prev] [next#]
[一覧に戻る]
[しおりを挟む]



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -