無自覚な感情(土沖/SSL/微裏)




屋上に誰もいなくなると、総司は下に降りてそのまま屋上を後にする。

先程の女子生徒の話はやはり告白だった。
女性の扱いには慣れているのだろう、土方は出来る限り傷つけないよう配慮しながらやんわりとそれを断り、その生徒を連れて屋上から出て行った。

とぼとぼと総司は人気の無い廊下を歩く。
もう帰るつもりだったのに、無意識に足が向いていたのか気付けば古典準備室の前だった。

「・・・ぁ。」

タイミング良く廊下の向こうから土方が歩いてくるのが見える。
土方も総司の姿を視界に捉えたのか、物凄い剣幕でこちらに歩いてきた。

「総司!!てめぇ・・・補習サボって今までどこにいやがった!!!」

すぐさま叱りつけようとするが、どうも総司の様子がおかしいことに気付く。

いつもなら全く悪びれない表情で愉快そうに口端を吊り上げるのに、今の総司はすぐにでも泣き出してしまいそうなほど悲しげに瞳を揺らしている。

「総司、どうした・・・何かあったのか?」

感じていた怒りなど一瞬でどこかに行ってしまい、土方は思わず総司にたずねていた。

「・・・何でも、ないです。」

「何でもないわけねぇだろ、そんな顔してんのに。」

土方は総司の手を引きながらとりあえず目の前の古典準備室に入る。
ソファーに座らせると、自分も隣に腰を下ろしてから改めてもう一度問い掛けた。


「ほら正直に話してみろ、悩みがあるんなら聞いてやるからよ。」

「それは、僕が土方さんの生徒だから・・・?」

俯いていた総司が顔を上げて土方を見る。

「土方さんがそうやって僕のことを気に掛けてくれるのは、僕が土方さんの生徒だからでしょう?」

「総司・・・?」

「教師だから・・・仕事だから仕方なく、僕みたいな出来損ないの生徒の面倒も見てくれるんでしょう?本当は面倒だって・・・そう思ってるんでしょう?」

「馬鹿言ってんじゃねぇ!!俺は面倒だなんて一度も・・・、」

「だったらどうして土方さんは僕の相手をしてくれるの?僕が近藤さんの知り合いだから?それとも僕が、両親に早く死なれた可哀相な子供だから?」

一度溢れ出してしまえばもう止めることなど出来ない。
翡翠の瞳からとめどなく涙を零しながら総司は土方に訴える。

「同情で僕に優しくしないで!!そんなことされたって僕が惨めになるだけだ!!!」

「総司!!!」

何とか落ち着かせようと土方が身を乗り出す。
そのまま総司の身体を自分の胸に抱き込むと、総司はもがきながら叫ぶように声を上げた。

「や・・・っ!!放して、放してよぉ!!!」

「落ち着きやがれ、総司!!」

「嫌いだ・・・!!土方さんなんて、大っ嫌いだぁ!!!」

「この・・・やろ、う!!!」

嫌いだと絶叫する総司に、土方の何かがぷつんと切れた。
暴れる総司の顔を強引に自分の方へ向けると、そのまま噛み付くように荒々しく唇を重ねる。

「・・・・・・ん、んぅ・・・っふ!!!」

何度も角度を変えながら口付け、差し込んだ自分の舌を総司のそれに絡ませる。
その勢いのままソファーに縫いとめるように総司の身体を押し倒し、さらに深く深く咥内を貪った。
呼吸を奪うほどの激しいキスに総司の身体からは次第に力が抜けていく。

「ん・・・・・・ふぅ・・・ん、ぁ・・・・・・。」

ほとんど抵抗しなくなったことを確認すると、土方は漸く唇を離した。

大きく肩を上下させながらはぁはぁと何度も呼吸をする総司。
酸欠のせいで頬は赤く染まり、飲み下しきれなかった唾液が口元を濡らしている。

「っ、は・・・ど、して・・・・・・?」

「お前が好きだからだ。」

真剣な眼差しで言う土方に総司は酷く困惑する。

「う、そ・・・。」

「嘘じゃねぇよ。俺は愛してもいねぇ奴に平気でこんなことしたりしねぇ。」

驚いて目を見開いている総司に土方は言った。

「教師だとか生徒だとか、そういう目線でお前を見たことなんざ一度もねぇ。それは俺にとって『沖田 総司』という人間が、薄桜学園の一生徒である前に俺の大事な想い人だからだ。」

「でも、僕・・・いつもいつも土方さんに悪戯して、迷惑掛けてばっかりで・・・・・・」

「お前はちっとばかし手が掛かるくれぇでちょうどいいんだよ、素直に甘えらんねぇ性格なんだから。」

育ってきた環境がいけなかったのか、それとも生まれつきこういう性格なのか、総司はどこか自分の感情を押し殺してしまうところがある。

他人と深く関わることを恐れるあまり、素直に人に頼ったり甘えたりすることが出来ないのだ。

「俺はむしろ嬉しいんだぜ?毎日のように悪さしてきたりそうやって怒るのは、ある意味お前が俺に気を許してくれてる証拠みてぇなもんだからな。」

「そんなわけ・・・!!」

「違げぇのか?」

「・・・・・・っ、違わない・・・ですけど。」

否定しようとしたのに、意思に反して正直に答えてしまう自分の口。
恥ずかしさでかぁっと顔に熱が集まっていくのがわかる。

そして感じる、心を満たす温もりの心地良さ。


「・・・・・・僕も、好きです。」

「あん?何だよ、話すならちゃんとこっちに聞こえるように話せ。」

「嫌です。・・・っていうかいい加減どいてくださいよ、重いじゃないですか。」

「そいつは聞けねぇ相談だな。」

退くどころかシャツに手を掛けてボタンを外し始める土方。
身の危険を感じた総司は、何とか逃れようともがきながら抗議の声を上げる。

「ちょ・・・教師が生徒相手に盛らないでくださいよ!?」

「お前は生徒じゃねぇってさっき言っただろうが。お前も俺のことが好きなんだし、両思いならしても何の問題もねぇじゃねぇか。」

「問題ありまくりです!!聞こえなかったふりして僕が言った言葉もしっかり聞こえてるし、酷いですよ土方さん!!」

「うるせぇ、ちったぁ黙りやがれってんだ。」

「ぁ・・・や、ダメ・・・・・・そんなとこ、触っちゃ・・・ひゃぁ!!」


― fin ―

2011.08.07




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