▼ 彼女のお菓子が食べたくて
「匂いからしてすっごく甘いですね」
「まあな」
午後3時。クラッカーの思いつきでタッセも巻き込んで作ったお菓子は今日も机いっぱいに積み上げられている。初めてそれに参加したというか参加させられたタッセは遠い目だ。どうせ砂糖の量が恐ろしいとか考えているのだろう。彼女が作ったのは1品のみだが、それだけでも余りに多いと感じる量を使ったのでそう間違ってもいないが。
「「いただきます」」
クラッカーは何より先にタッセの作ったシュガービスケットを選んで口に運んだ。タッセも結局毒味もさせて貰えなかった為手に取ったがクラッカーの方が早かった。
「どうですかね……?」
「食える」
「あー…すみま、」
「人の話は最後まで聞け。…まぁ、流石おれが隣りで教えながら作っただけの事はある位には食える」
タッセから視線を逸らしながらクラッカーは2枚目を手に取る。分かりづらいが取り敢えずは合格らしい。自分もと食べてみたが自分が作ったとは思えない程度には美味しかったと思う。尚タッセの舌ではひたすらにだだ甘く感じてしまう為判定が曖昧なのだが。
「今度はもう少し凝ったのを教えてやろう」
「もう暫くはいいです…」
「何だと……?」
クラッカーの笑顔を口の中の甘味を紅茶で流すタッセが凍てつかせる。
「やっぱりクラッカーさんの作るビスケットの方が何倍も美味しいですから」
至極当然の事を言われてクラッカーは面を食らった。そして理解した。どうやら彼女は些か完璧主義の気があるらしい。クラッカーから言わせてみればお菓子作りは何より回数をこなしてこそだが、彼女は作ったものを楽しみ辛い舌のせいで回数を重ねてこなかったし、今でもあまり重ねようと思えないのだろう。
「いいや作るぞ。安心しろ、下手になぞ作らせはしない」
タッセが無言でクラッカーの作った甘いビスケットを食べようとするのを見て、彼女の為に作った甘くない物に持ち替えさせる。実は失敗しても罵倒しながら完食してやるぐらいの覚悟はあったのだが、クラッカーは敢えてそれを言うことは無かった。
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(次ページは後書き&ひー様へ)
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