▼ 矛盾に気づかない女
「やっと慣れてきたところだったのに…もっといればいいのに」
「…ありがとうございます。でももう決めたので」
一緒に働いていた同僚やポケモン達に囲まれる。ああ嫌になる。これだから私は辞めるんだ。
マンションに帰ってきて私はベッドに顔を埋める。しんどい。このマンションも引き払わなければならない。…面倒くさい。私はこの世界に生きるには向いていないと何度だって思う。
…どこかポケモンのいない土地は無いものだろうか。
ポケモンと共に人が手を取り合って生きる世界。素晴らしいとは思うし、そんな世界に生まれて20数年、受け入れてはいる。文句は無い。…ただしそれを強いられないのであれば、だ。
私はポケモンが嫌いだ。出来れば関わらずに生きていたい。だから各地を点々として生きている。長く一緒にいると必ず「うちのポケモンが」とポケモンを可愛がる事を強いられる。実に面倒くさい。
「知ってる?大昔はポケモンはいなくて『どうぶつ』がいたらしいよ。そして『どうぶつ』と人間は今の人間とポケモンほど一緒には生活していなかったんだって」
ねぇケーシィ過去にテレポート出来ればいいのにね、と私はボールから出した子に言う。そんな事、できるとしてもそれはセレビィやディアルガのような伝説にしかありえない。
次はどの街へいこうか、と私はケーシィを抱きしめて眠りについた。
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