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▼ ブリーダーに恋したリザードンの話

 今思えば予兆はあったのに、どうして気づけなかったのだろう。



「こいつは本っ当にお前の事が好きだなぁ」
「本当に!もうちょっと愛想がいいとすぐ貰い手がつくってのにこの子は…」

 頭を撫でてあげると嬉しそうに尻尾を燃やした。…うん、誰にでもこのぐらい懐けばいいのに。まぁトレーナーさんの好みも相性も人それぞれだし、進化したら大抵が勇猛な性格になる傾向があるからこの子も大丈夫だろう。

「お前重いんだから足に乗らないでって」
 足に抱きついたヒトカゲの手をやんわり引き剥がす。9キロあるんだから乗るのは勘弁して欲しい。そして私はきのみの入ったバケツを持ち直して他のヒトカゲ達の元へと向かった。

 リザードン、及びその進化前のヒトカゲとリザードは極めて人気の高いポケモンだ。猛々しいその姿とそれに見合う強さに惹かれるトレーナーは多い。しかしながら野生のヒトカゲ達は岩山の奥に住み人前に姿を表すことはほぼ無く、また飼育するのもその攻撃的な性格のおかげでブリーディングも難しい…。その難しいヒトカゲ達の育成に成功したのがこの育成場だ。ヒトカゲという種に寄り添い、また比較的人好きするように育てられている。ここが私の家。



 それから数年が経った。多くのヒトカゲ達が貰われて行き、進化して貰われて行き、つがいを作って新しいタマゴを産んだ。老リザードンの中には良いパートナーに出会えずに野生に帰ったもの、ここで一生を終えたものもいる。勿論愛情を持って接したから悪い一生ではなかった…と思いたい。その中で異様な個体が1匹。

「お前私以外にもなつきな

 背中からのしかかってくるリザードンの頭をポンポンと撫でる。ヒトカゲの時のように高い声で鳴いて甘噛みしてきた。加減も加減されてるから血も出ないけれどやめて欲しい。お客に見られたらどうするんだ。

 …正確に言うとこの子は異様と言うより問題児だ。個体値はほぼ理想の高さ、臆病ではなく人馴れもしていてレベルも若さの割に高い。が、このリザードン、私にだけデッレデレなのである。

 もう一度言う。デッレデレなのである。

 つい先日も強いリザードンが欲しいという客が来たのでマッチングさせたのだが、私への甘えきった態度を見られてしまいドン引きされた。人懐っこいリザードンだと思われて(実際人見知りしないし)(ただし私に限ってこのデレデレぶりだ)1度貰われて行った事があったが、トレーナーがボールから出した隙にここへ飛んで戻ってきてしまった事さえある。

 オーナーである父も半ば諦めて繁殖用個体として扱い始めた。まぁ強い雄だから子供にも期待できるだろう…とは思うけれど、やっぱり勿体ない気もする。こんなに魅力的に育ったのに。まぁ新米と言えどブリーダーの端くれ。いざとなれば最後まで付き合う覚悟は出来ているけどね。

「おーもーいーー!!いい加減にしなさい!!」

 体重をかけて頭を甘噛みしてくるのは最早このリザードンの癖だ。しかも最近特に酷い。体重100キロ近いんだからやめて欲しい。圧死する。





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