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▼ お菓子に無頓着な人間の選ぶ茶菓子

「あの、本当に来るんですか…?」
「やることが無くて暇だ。ついでに気になることがある」

玄関での短いやり取りの後、2人は家を出た。タッセの家が住宅や商店が連なる区域から外れた場所にあるのも理由の1つだろうか、昨日の小さな島だと言う言葉通り緑の割合が多い。風に乗って微かに甘い匂いが漂ってくる。とは言っても住居と店舗は隣のためすぐに着いた。

裏口からバックヤードに入ると、背の高くない人間向けに設計されたであろう小さなキッチンスペースと同じく高くない棚が並んでいる空間がある。天井が高いのが幸いではあるが体格の良いクラッカーにとっては窮屈さを感じる広さだ。

棚の中を覗き込めば大量の陶器の瓶が行儀よく並んでいる。見慣れない形の容器もあるのでマイナーな種類も取り扱っているのかもしれない。幾つかの棚を覗き込んで、クラッカーはやっと探していた物を見つけた。

「もう少ししたらあと2人出勤してき…って…クラッカーさ…ん!?何、を…!」

タッセはそれ以上言葉が出なかった。クラッカーがしゃがみ込んで棚に仕舞ってあった茶請けの菓子を食べていたのである。たいして種類がある訳では無いがご丁寧にも全種類1つずつ。

「あ、あの…それは店で出してる物で…」

クラッカーは返事もせず今度は冷蔵庫の中の菓子を物色し始め、同じように1つずつ、または1口ずつ食べていく。タッセはその思いもよらない行動に混乱しかできない。そしてタッセからは後ろ姿しか見えない為に、菓子を食べれば食べる程にクラッカーの顔が険しくなっていく事に気づけない。

「………ハァ…」

冷蔵庫の扉を閉め、その扉に寄りかかりクラッカーは溜息をついた。更には手のひらで顔を覆い天を仰いでいる。

「ここはカフェじゃないのか…?」
「えっと、基本は茶葉を売る店です…店内で召し上がる事も出来るようにはしてますが…」
「そのお茶菓子がこれだと……?こんなものを店に出しておいてよくぺしゃんこに潰れなかったものだな!!!練りきりと饅頭はまだましだったが特に棚のビスケットは酷い!!!いつのだ!!?」

クラッカーの口調が段々と荒々しくなる。目の前の女が菓子を食べないと言っていたのである程度嫌な予感はしていたがそれを遥かに上回って酷い。甘く評価しても下の中、それをなってない管理で下の下の下に落としていると言って良い。渋々昨夜のおやつは抜いたが、これでは滞在期間中のおやつは抜き続けた方がずっとましな程になってしまう!至福の!そう、至福の!!時間であるはずの!!!おやつが!!!!

「言われるほど古いものではないんですが…」
「なら保存の仕方が悪いのだな」

怒涛のダメ出しにタッセは返す言葉もない。

「おはようございます。何事ですか?」

沈黙が支配しかけた空間を壊したのはクラッカーともタッセとも違う声だった。



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