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▼ 食べ物≒甘い物

おれは確かに言った。「行動にはくれぐれも気をつけろ」と。

余程平和呆けした島なのか、それともこいつの危機管理能力が死んでいるのか。

クラッカーは特にすることも無くキッチンに立つ女の方を見てみれば、目が合い会釈してくる。女の目に怯えの色は映っていない。

店からタッセの家へと場所を移してから、むしろ移す前からタッセの態度は変わらない。決して無礼を働く訳では無いがクラッカーがどのような類の人間か察した上で怯えもへつらいもしない。

シャワーを貸せと言えば服は洗うかと尋ね、時計の短針が頂点に近づくのを見れば呑気にも食事はいるかと尋ねる。力量差が瞭然なのに武器まで返してくる始末。

それはビッグ・マムの息子として生きてきたクラッカーとしては不可解にしか映らない態度だ。彼は常に部下や国民には敬われ、敵には恐れられて生きてきた。例外は家族ぐらいのものだ。

ひとしきり物思いを終えた辺りでタッセが昼食を運んで来る。クラッカーは盆から直接皿を取り、目の前の女が食べ始めてから自分も口をつける。

そして違和感があることに気づく。勿論毒の類ではない。

甘くない。

万国は言い換えるならお菓子の国。建物や家具も菓子なら菓子製の服もある。カカオ島を例にとるならチョコパスタやチョコの唐揚げなど、料理もほぼ甘い物ばかりだ。

つまり久々に食べる甘くない食事である。

「お口に合わなかったですか?」
「食えなくはない。気にするな」

相変わらずタッセはただ純粋に疑問の表情を浮かべる。クラッカーが軽くあしらってもやはり対して気にした様子はない。

パティシエ出身の者が大多数とはいえ一流シェフの料理を食してきたクラッカーの舌からすると物足りなくはあるが及第点である。

一緒に出された紅茶を口に含むと意外にも満足のいく味であったので、いくらか評価を上方修正しても良いかもしれない。



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