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▼ 遊撃手

 新世界を目指す海賊達は船をコーティングする為にシャボンディ諸島へと集まる。そしてコーティングには五日程以上の時間がかかる。キッド海賊団もその例に漏れず、その間は船番達を除いて各自自由行動だった。


「イケメンいるよ〜〜」
「…」
「ちょ、ちょ、今いいかな?」
「…」
「お嬢ちゃん、一人?ここら辺は危ないから一緒に着いて行ってあげようか」

 65番GR。無法地帯と政府出入口の中間近くにあるその場所に1人の女が歩いていた。明らかに下卑た笑みを浮かべる男の声に、感情の見えない顔を向けて誘いに乗る。分かりやすく路地裏に入っていった男女は、しばらくして女だけが出てきた。その手にはいくらかの赤とB紙幣が握られている。

「345…5万Bか。んー…期待はずれ」

 もしその現場を見ていた者がいたら驚いただろう。一般人にしか見てない女が男を伸して出てきたからだ。しかし治安の悪い場所で他人を注視しているような輩はそういなかった。リブはよれた紙幣を財布に仕舞う。男もカモだと思い込んだ女が海賊だとは知らなければ逆に金を盗られる事も無かっただろう。

「そろそろ時間かな」

 用事も済んだし、とバックの中から酒瓶を取り出す。既に空のそれを、路地裏から飛び出してきた先程の男の顔面に叩き付けた。再度意識を失った男を後目に、その場を後にした。


 1番GR内のバーのトイレに陣取りショルダーバッグを便座の蓋に置いた。

 デニム、Tシャツを脱いで、胸元が開いたショートドレスに着替える。腰にはサッシュベルト、利き腕にはアームガードを巻き付ける。冒涜的にも骨を象った胸当てを装着。スニーカーからヒールへ履き替えて、メイクを直す。髪色と同じアイライナーで傷のようにラインを、口紅を引く。ヘアピンをとり癖のついていた髪を櫛で梳かし、下ろしていた髪を結い上げる。最後にショルダーバッグの中から普段使っている鞄を取り出して、脱いだ物を全て仕舞う。

 トイレを出て、更衣室使用のついでに頼んだラムを飲み干してバーを後にした。

 バーの外の壁には手配書が貼られていた。【ユースタス“キャプテン”キッド】【“殺戮武人”キラー】【“遊撃手”リブ】張り出された女海賊と同じ顔が通り過ぎて行った。





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