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▼ カレーうどん事変

「「「いただきまーーーす!!」」」
「…リブちゃんもこっちに来たら?」
「…平気。それに皆絶対跳ねさせるじゃん」

 ドルヤナイカの家には椅子が三脚しか無かった。だから自然と1人は少し離れたソファに座って食べることになる。キッドもキラーも食べ方はそれなりに豪快だし、ドルヤナイカは先程のあの様子なのでソファにシミを作る気がする。ついでに嫌な予感がしたのもありリブは椅子をはんぶんこしようとするドルヤナイカに首を横に振った。

 んあ、と口を開けてカレーの絡んだうどんを口に運び、啜らずに噛み切る。美味しい。ドルヤナイカの母は料理上手だと思う。

 啜っては跳ねて悲惨な事になるから麺はちまちま食べる。大きめにカットされたじゃがいもを慎重に頬張る。2日目のカレーで表面がトロトロしていて美味しい。気をつけていても跳ねるから持参したナプキンを首に下げ、膝に起き、服を守りながら食べる。カレーの染みは対処が面倒なのだ。

 半分ほど食べ終えて、ふと顔を見上げてテーブルの方を見てみると、そこには大惨事が広がっていた。

 ズルズルと汁跳ねなんて知るかとばかりに啜りまくる三人は自分どころかお互いの服やらテーブルやらを汚しまくる。加えてドルヤナイカに至っては箸から掴み損なったうどんがボトボトとルーへと落ちて胸元を派手に汚して、ルーを多めに絡ませて食べるものだから唇もほっぺもべとべと。…うん、離れていて正解だった。

 美味い美味い美味しいと言い合う三人は自分たちの惨状に気付かずに食べ続ける。器を空にした時にはキッドとキラーの服はシミだらけ。ドルヤナイカに至っては全身真っ茶色だった。行儀良く食べていたリブはナプキンに3つ4つ小さなシミを作った程度だが、汚す為にナプキンを敷いたし服は無事なので問題は無い。「ご馳走様」と唱えて1人先に流し台へ器を置きに行った時に事件は起きた。

「ハハハハハハ!!なんだそれ!!」
「…ハハ、ファ、ファッファッファ…!!」

 あ、久しぶりにキラーの笑い声を聞いた。と呑気に構えていると、キッドが特大の爆弾を落とした。

「肥溜めにでも落ちたみてぇ!!まるでうんこ被ったみてぇだ!!」
「!!ファ、ファッファッファッ!!!!」

 ゲラゲラと腹を抱えて笑うキッドに、突然の下ネタがツボに入ってしまったらしいキラー。リブはと言えばドン引きだ。カレーを食べた直後に言うものでは無いし、鏡を見てから言えとも思う。…問題はドルヤナイカだ。顔を真っ赤にして、整った顔を歪ませる。

 あ、泣くかな。泣いたら面倒だな。と顔を顰めていたが予想は外れた。

「何がうんこまみれよ!!!!!!!!それを言うならあんた達だってうんこまみれじゃない!!何よ!!折角ママの美味しいカレー食べさせてあげたのにテーブルもこんなに汚して!!!!!!!!ママに怒られる!!!!!!!!」

 今までで初めて聞く彼女の大声に三人は固まる。

「嫌い嫌い嫌い嫌いだいっっっ嫌い!!!!!!!!」

 テーブルに乗り上げて拳を振り上げ、茶色の少女が全力で殴りかかってくる。そのあまりの剣幕にたじろいだのもあり、仮にも好きになった女の子というのもあり、べとべとになった彼女に触りたくなかったのもあり、喧嘩になれば普通に勝てる筈のキッドもキラーも無抵抗に殴られるしか無かった。

「折角!!美味しかったのに!!うんことか言って!!さいっってーーー!!あんたも!!何よ!!変な笑い方して!!あんたの方がずっと変じゃない!!」

 その言葉にキラーの顔が引き攣った。…全面的に今回は笑ったキッドとキラーが悪いが、ドルヤナイカも怒りに任せて余計な事を言った。両手を振り上げるドルヤナイカの腕を掴む。

「今はキラーの笑い方は関係ない」
「うるさいうるさいうるさい!!出てけ!!あんた達なんて大っ嫌い!!もう二度と来ないで!!っっっ!!」
「…そ」

 怒りが悲しみに変わってきたのか今度はボロボロと涙を流す。ドルヤナイカを放置して、放心状態のキッドとキラーを引きずって彼女の家を後にする。椅子は倒れて、どんぶりは割れて、部屋中茶色で少女が泣いている。中々に酷い状態だが親が帰って来れば彼女は慰められるのだろう。まさか食事ひとつでこんな事が起こるとは思わなかった。





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