▼ 10月12日
クリスマスもまともに祝えない家では年に2回の特別な日だった。ファミリーサイズのケーキを2人で食べる贅沢な日。ただし2人でと言っても、その7/8は図体の大きな子どもの腹に収まるのだけれど。…そうだとしても今日はそれも許される日。何故なら彼が主役の日だから。
ハッピーバースデー トゥー ユー
ハッピーバースデー トゥー ユー
ハッピーバースデー ディア ラッシー
ハッピーバースデー トゥー ユー
「おとうさん、育ててくれてありがとう!!」
大好きな父親が、毎日汗水垂らして働き、どうにかやりくりした金で買ってきてくれたまんまるのケーキ。歌は得意じゃないと、短い歌詞でも少し調子外れのバースデーソング。何より忙しいのに毎年この日は開けてくれる父自身。彼はその全てに幸せを感じていた。
それは、遥か昔の幸せの日の記憶。
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