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▼ シンクロ

万国にも冬はやってくる。温かいスイーツをより美味しくするために一役買っている寒さとはいえ、看破出来ない問題がある。それは━━

「けほっ………はっ……」
「しっかり者のスムージーともあろうものが珍しい」
「…伝染されたくなければ退室してくれ、兄さん」
「ああ、早く良くなれよ。ペロリン♪」

風邪である。時に味覚を鈍らせ、食欲を減退させる風邪など悪でしか無い。

常ならば体調管理を怠る事は無いのだが、今回は悪条件が重なった。昨晩は嵐の中での戦闘、敵の数だけは多い、気候は冬島の冬、スムージーが扱うのは水分、と相性が悪すぎた。…無論我らビッグ・マム海賊団の勝利であったが。

小麦色の肌は色づいている。平素は血色の良くない厚い唇をピンクに染め、そこから熱い息が漏れる。布団を肩まで掛けた状態で長兄を睨む。すると頭を一撫でした後、相変わらずの芝居がかった仕草で出て行った。

ああ…もう情けない…とっとと寝て治してしまおう。

スムージーは目を閉じた。倦怠感はそのまま眠気になった。


ところで、こんな話を聞いた事は無いだろうか?一卵性双生児は時に不思議なシンクロを見せるらしい。例えば離れた所で片方がストレスを受けた時にもう片方の胃が痛んだ。例えば片方がある本を買って帰ればもう片方も同じ本を買っていた。例えば━━

「カッッ……ハッ!!はっ…はっ……うぇ……」
「40度きっかり。暫く入院だね?おめでとう」
「は……はぁ…はっ………」

片方が風邪を引けばもう片方も風邪を引く。

ラスもまたベッジの部下としてスムージーと同じ戦闘に参加した。が、ラスはベッジの体内にいたし、主戦力かつ指揮官を務めたスムージーとは違い仕事量もそう多くは無かった。…しかしこの通りである。

小麦色であった筈の肌は寧ろ鈍い赤となっている。平素は血色の良くない厚い唇は紅を引いたようだ。柔らかな髪は汗で顔に貼り付き、整っていると形容できる顔立ちは今は苦悶に歪められている。

虚ろな状態で口元に寄せられたストローを反射で咥えて水分を摂る。甘じょっぱく冷たいそれは口から全身へと染み入っていく。心做しか落ち着いた気がする。ぼやけていた視界が更に狭まって行った。いつの間にか意識は落ちていた。

かくして、2人は本人達すら知らぬところで同時に風邪を引き、同時に眠りについたのである。





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