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2019/11/01 14:27

 私は片思いをしていました。


 その子と私は同じ年、同じ土地に生まれました。

 多分出会いは保育園の時だったと思います。
 いつも独りでいる子でした。周りよりもしっかりした子どもでした。行儀の良い子でした。器用な子でした。運動も出来ました。小学校に上がれば勉強も出来る子でした。なんでも出来るすごい子に見えました。優秀だから浮いていると思いますか?いいえ、それ以前にただ独りでいる子だったんです。

 小学校の三者面談の日でした。
 私は面談を終えて、母と一緒に帰るところでした。その時私は忘れ物をして1人学校に取りに戻りました。その途中で職員室の前を通りがかり、その子をみかけました。担任の先生と話をしていました。どうしてかわたしはそれを聞いていました。両親の仕事の都合がどうしてもつかず、面談が出来ない…そういった内容でした。珍しいには珍しいですが、別に大した事ではなかったはずです。それでも私がみ入ってしまったのは、その子があまりに平坦な顔をしていたからです。1+1=2のように「あいう」の次が「え」であるように当たり前の事を聞かされているような顔をしていたからです。あまりにその顔が印象的で目に張り付いて、今思えば一目惚れだったのだと思います。

 それから私はその子にくっついていました。ずっと隣りにいました。
 相変わらずその子は独りでしたから、誰かと取り合いになることはありませんでした。いつも変わらず、綺麗でしっかり者で器用で勉強が出来て運動が出来て、でも完璧ではないのだと知りました。素直に空気を読まずに発言するから時に人を傷つけ、自分がした方が早いと判断したら人の仕事を取ってしまい、何かできない事があっても、自己責任で済まそうとする。完璧なようで、人として穴だらけの人。

 ずっと隣りにいたけれどいようとしたけれど、1度だって足並みを揃えて貰えたことはありませんでした。保育、小、中は何もしなくても一緒に居られたけれど、高校大学はその子について行きました。嫌だとは言われませんでした。1度だって私に合わせてくれたことはなかったけれど、むしろそこも含めて好きだったのです。

 だからこれからもずっとあの子の隣にいるつもりだったんです。今も隣にいたいと思っています。でもやっぱりいつだって私に合わせてはくれないのです。…はい。そこが大好きでした。大好きです。だからあの子の元へ行ってきます。さようなら。


 わたしは片思いをしていました。いいえ、片思いをしています。



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