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異次元の狙撃手9

博士宅 屋上

「どうした?オメーら
せっかくの花火なのに元気ねぇじゃねぇか」

博士宅につき、花火もして皆が線香花火を持っているのを見れば、それも終盤。
話には歩美ちゃんが何やら元気がないとの事だったが、哀ちゃんや新一を除く3人もどうやら元気がないように見える。

「当たり前でしょ。人が目の前で撃たれたのよ」

呆れたように哀ちゃんがそう言った。

「そりゃそうよねぇ…」

運んだ椅子に腰掛ける研二さんや陣平さんは、そうかなぁ、と苦笑していたが。
彼らはまだ子供。いくら新一と出会い事件遭遇率が上がったからといえど、死に対する耐性がついているわけが無い。

「それだけじゃねぇよ!」

と声を上げたのは元太くん。

「え?」

と新一が顔をあげれば眉を下げる3人。

「せっかく撮った写真、取られちゃったんだよ」

「デジカメもぜーんぶです」

と歩美ちゃん、光彦くんと続く。

「預かっただけよ。
すぐに返してくれるわ」

あらら…

と、大人3人で思わず苦笑してしまった。
確か、夏休みの宿題をするために彼らは写真を撮っていたし、早く返して欲しいのは当然といえば当然。

「捜査の手がかりになるかもしれねぇからな」

と、いえばシュッと静かに歩美ちゃんの線香花火が消えた。

「あっ終わっちゃった…」

「あ、僕もです…」

次々と終わる線香花火。
その火は弱くも、火種を中心に輝いていたが、すべてが消えると空間が丸々暗くなったかのように錯覚すらする。

「どうだ?気分転換になったか?」

「こんなんじゃなんねぇよ…」

あはははは、提案した博士も浮かばれない…。

「もっと買ってくればよかったです」

と物足りなかったらしい子供たち。
はぁ、と溜息をつきながら、羽織っていたカーディガンに手をかける。

「そういうと思って博士から預かってきたわよ〜」

バサッと開けば私の腰にはベルトがひとつ。

「ボール射出ベルト?」

「の、NEWバージョンらしいわ」

新一を先に誘導して、その正面に私が立つ。
聞いてなかったらしい陣平さんや研二さんは訝しげに、子供たちはなんだなんだとこちらを見ている。

「なるべく高く蹴って」

「わぁったから早く出してくれ」

と呆れる新一。

「何よその態度。これ私の発明ってわけじゃないんだけど」

「あーはいはい。わかったわかった」

新一がキック力増強シューズのスイッチを入れて準備する。私は博士から教わったとおり、タイマーをセットして、一声かけてボールを発射した。

「はっ!」

と短い声を上げて新一が真上へボールを高く蹴る。
それに黄色い声を上げるのは歩美ちゃんだけ。

ヒューーーーン、と高い音をあげたボールはドーーーーンッと音を立てて上空で綺麗に開花した。

空には大輪の花火。

手を挙げて喜ぶ子供たちに、

「すげぇもんだ」

と、物珍しそうに見上げる男が二人、

唖然と見上げるのが、哀ちゃん。

「名付けて、花火ボール、らしいわ」

あ、と声を出して、電気がつき出した階下を見て哀ちゃんは

「でもこれ、近所から苦情来るわよ」

と言う。

「そうね、私もこんなにおっきいと思わなかったわ…」

と苦笑した。
その後ろ姿を一人の男が見ているとも知らずに。

いいなー!と声を上げて僕達にも!と博士に聞きに扉を潜る子供たちを尻目に、花火の入った水を持ち下の階へ向かう。

「はぁ、さて、帰りますか」

「おう。送ってく」

「隣だからいいわよ…」

「近場でも安心しちゃダメだよ」

と、結局工藤邸まで二人に送られ、子供たちは陣平さんが自宅まで車で送って帰った。

「…ただいま戻りました〜…」

「おかえりなさい美織さん」

小さく声を出したにも関わらず、沖矢さん、いや赤井さんが玄関へと歩いてきた。

「すいません、遅くなっちゃって」

「いえ、そんなことは
花火は楽しかったですか?」

「あれ、そういえば…
沖矢さんはお声かからなかったんですか?」

「えぇ、丁度家を外していたのか戻ってきたら子供たちの声がしてましたし」

「へぇ、で、ハンターの件は聞きましたか?」

「はい…ジェイムズさんからの招集でね」

ピッと音がして彼の声が変わった。

「そうですか、じゃ、私から報告することは無いですね…
あ、いつでも狙撃できるようにしといてください」

「…お得意の未来予知か?」

「さぁ?どうでしょ?
期待してまーす。おやすみなさい」

「…おやすみ」


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