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「…まぁ!今日はここまで。
顔合わせだけのつもりが長くなっちゃったわね。
マネージャーの方に戻んなさい」
礼さんがそう言って私の背を押す。
「了解です」
ニヤニヤと見てくる御幸は放置して。
──────────
「あ、戻ってきた」
「すみません遅くなりました」
藤原先輩に夏川さんに梅本さん、その後ろには3年生だろうマネージャーが顔を揃えている。
「先輩、この子も新しいマネージャーの1年生で、咲良有澄です」
「へぇ〜よろしくね…女でいいのよね?」
「えぇ女です」
やば、なんか先輩の顔も引きつってる気がする。
「…まぁ、よろしくって言っても私早期引退するから来月には居ないんだけどね」
と苦笑した。
「え!?」
梅本さんと夏川さんが声を上げた。
藤原先輩は動揺していないのはまぁ、知っていたのだろう。
「ごめんね、大変だろうけど今年は3人も入ってくれたし…
うちの野球部は強豪だから選手達は推薦とかあるんだけどマネージャーはね…入って早々する話じゃないけど…」
「でも、5月まで残ってくれるって言ってくれて嬉しかったですよ…私一人では無理だなって思いますし…」
「後輩が育つまではね…
私の志望校そこまで高くないからまだ間に合うし…
貴子には迷惑掛けるけど、何かあったら言ってくれたら協力するからさ」
そう言ってきゅっと蛇口を閉めてジャグを乾かす。
「はい、ドリンク作って…
…新しいジャグは…」
「私持っていきますよ」
「え?重いわよ?」
「大丈夫です。結構鍛えてるんで」
確かに少し重いけど持てないわけじゃない。
多分この中で私がいちばん力も体力もあるし。
グラウンドに両手に一つずつのジャグを持ちベーランをする同級生を尻目にゴトッと、鈍いを音を立てジャグを置く。
「っと…」
「マネージャー!って1年…ってさっきの1年か!?」
背後から急に大声で声を掛けられ思わず肩を跳ねさせた。
「っ…先輩…えっと…」
「あ!?」
「純、何怖がらせてんの。
ごめんね、俺は2年小湊亮介。
で、こっちは伊佐敷純。スピッツって呼んでやって」
「亮介ェ!余計なこと言うな!」
「小湊先輩に、スピッツ…先輩?」
「スピッツ呼ぶなァ!」
「あはは、すみません。
で、どのような御用で?ドリンクなら後でこれとは別に藤原先輩達が持ってきますよ」
「そんなんじゃねぇよ。
なんで2個もジャグ持ってんだよお前。ヨタヨタ歩きやがって」
「えっ」
そんなにヨタヨタ歩いてた…か?
「心配しなくてもフラフラしてなかったよ。
こいつが分かりにくく心配してるだけ」
「だぁああぁ!うるせぇ!」
よく吠える先輩だ。
伊佐敷純先輩…ね…たしかスコアを見る限り外野だったけど打撃力が持ち味だったはず。
で、小湊亮介先輩は守備力とよく粘るバッティング。
こういう打者は敵に回すと厄介だ。
選球眼も卓越しているし。
「ご心配ありがとうございます。
でも、私結構鍛えてるんで大丈夫ですよ」
そう言ってそこを足早に去る。
いつの間にやらベーランしている1年の人数も減っていた。
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