2人の太宰
「……は?」
「は?」
「は?」
これは決して巫山戯てや喧嘩しての「は?」ではない。
三人が三人とも、目の前の状況に理解が追いつかず、無意識に声が出たのだ。
「……思い出した……最悪だ……こういう事だったのか……」
「え? ちょっ太宰……?」
目の前の見慣れた同僚兼恋人である太宰と、全く同じ顔同じ声同じ背格好の、
「君は、明里かい?
随分とイメージが違うから気づかなかったよ。
その格好だと仕事中目立つよ?」
こちらも太宰治である。
砂色の外套を身につける探偵社である22歳の太宰が顔を顰めて、黒い外套に包帯に隠された右目、頬のガーゼが目立つポートマフィア最年少幹部である18歳の太宰を見る。
その視線はどことなく黒歴史を見るような、なんとも言い難い視線だ。
「そっちは? とうとう人の姿を模倣する異能力者でも見つけたのかい?」
それにしては服装が違いすぎるけど……とじろじろと探偵社の太宰を見る。
「え? ……ちょっと太宰、説明して……」
「なにを?」
「あんたじゃない! 私はこっちの太宰に────「いやいやすみませんね最年少幹部殿! 私は田中太郎。変装の達人でこっそりあなたの顔を拝借しただけですよ。異能力者ではないのです」モゴッ」
「へえ、そりゃあ面白い。随分似てるねぇ……
でも少し老けてない?」
「変わらないでしょ」
「いや老けてるよ。私はピチピチの18歳なのだよ?」
「変わらないってば。4年でそんなに変わってないでしょ。何を根拠に言ってるのさほんとに君失礼だね」
「太宰それほんと特大ブーメランだからやめた方がいいよ」
「まぁ18の小僧には大人の色気がわからぬのだろう」
「君、人の顔を借りておいて言いたい放題だね……殺されたいわけ?」
「……あーもー面倒くさくなってきた」
「だってこいつが!」
「こいつってそれあんただから」
「……君、本当に変装なの? それにしては出来すぎてる」
怪しむ太宰(18)は太宰(22)に顔を近づけた。
「男と見つめ合う趣味はない」
「私だって同じさ」
「仕方が無いね。流石は私だ。
やはりこうなるのだね……私は太宰治。
未来の君さ」
「うわ結局言いやがった!」
「未来の……私?」
「そうさ。4年後の」
「ふぅん、だから老けてたのか」
「それ、未来の自分が傷つくからやめ給え」
「嫌だなぁこんな大人になるの……」
「クソガキ……」
「おっさん」
「……もうめんどくさい……」
「おい糞太宰!!」
「「うわっ」」
「あ、中也!」
「あ? 明里 ?先帰ったんじゃねぇのか」
「まぁ、うん……」
路地の奥から中原中也が出てきた。
彼も18歳。これで双黒が揃った。
「うわぁ、さっすが中也、小さいねぇ」
「んだとゴルァ! ……ってなんで糞太宰が二人もいるんだよ! こんなんが二人もいたら世界崩壊するぞ!」
「失礼だね君は……」
「全くだよ中也」
「あぁ!?」
「あーもー落ち着いて中也!」
「「明里、中也から離れて」」
「ンだとゴルァ! 明里! こいつから離れてろ!」
「というか、それならその明里は四年後の?
へぇ、変わらず、いや、少し大人っぽく綺麗になったかな?」
「は!? そ、そう?」
「ちょっと明里?そんな子供に褒められて何喜んでるのさ。まぁ、それなりに経験を積めば女性は更に美しくなるからね…」
「な、は? 四年後……?」
「まだ分からないのかい?」
「本当に中也って莫迦だよね。
そんなんでよくマフィアで生き残れてるよ……あぁ、体術だけで生きているんだもんね、莫迦な中也に
は生き残りやすいか」
「……ぶっ殺す!」
「もうお願いだから黙ってて二人とも……!」
早く帰りたい!
2人の太宰
ifのシリアス書いてて二番候補も書いてみたくなった。何も考えず書いたんで続きかけそう笑
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