中島バレンタイン
「っ……嘘でしょう?」
この時程、自分の料理スキルの低さを心底恨んだ。
明日はバレンタインだというのに。
さて、彼にどうするべきか……
「おはようございます!」
キラキラとした笑顔で駆け寄ってくる我が彼氏、中島敦。
あぁ……言うんじゃなかった。
数日前、バレンタインは期待してて! 作るから! と宣言してしまった事に後悔しかない。申し訳ない。
「お、おはよう、敦くん」
気まずそうな、なんとも言えない表情の私に彼は小首を傾げる。
「えっと……?」
ああぁもう罪悪感!
「ごめん!」
ばっと頭を下げて敦くんに謝る。
「へっ!? ちょっ頭上げてください!」
「あのね……その……実は……」
────失敗したの
「しっ……ぱい?」
「チョコ……頑張って作ったんだけど……失敗しちゃって……」
「な、なんだ……」
「へ?」
「こんな日にふ、フラれでもすふのかとてっきり……」
「そんなわけないじゃん……」
いつでもいいから、くださいね
へへっと安心したように笑って、彼は朝からの依頼へ向かっていった。
*
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