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保護

太宰は社長室へ向かう前に事務所に顔を出した。

「国木田君。異能特務課のデータベースから彼女に該当する異能力者が居ないか調べてくれないかい? 能力は……治癒系で」

と指示を飛ばしたところでパソコンの画面を示された。

「先程乱歩さんから言われて調べておいた。
該当なしだ。少なくとも政府が把握している異能力者のリストにあの娘はいない」

「さすが乱歩さん。ということは……」

「あぁ、先に乱歩さんは社長室へ行っている。
お前が戻ってきたら俺とともに来いと言っていたからな。行くぞ」

ツカツカと太宰の横を通って国木田は事務所を出た。それに続いて出ようとした太宰に敦が声をかけた。

「あの、太宰さん。彼女は……」

「彼女は無事さ。安心し給え。
しかし、厄介なのは彼女の異能だ……君同様にマフィアに狙われる可能性がある、特殊な異能力かもしれなくてね…今から社長室で会議さ」

「と、特殊な異能って……!?」

「それは彼女が目覚めてからでないと分からないさ。異能力は十人十色。小さな異能力から大きな異能力があるからね。それじゃ〜私の報告書も頼んだよ敦くん」

ヒラヒラと手を後ろ手に振って行く姿を「えっ!?」と唖然とした敦が見送った。
先までもう少しいた社員達も少しずつ減ってきていた。

─────────社長室

「社長」

「遅いぞ太宰に国木田〜」

国木田と太宰が声をかけて中に入れば乱歩がブーたれていた。会議室に向かうほどでないことから社長室で事足りる、と思ってはいたが、どうやら事のあらましを乱歩が既に社長である福沢に話し終わっていたらしい。

「乱歩さんはなぜあの娘が異能力者だと?」

「僕は名探偵だからね」

答えになっていない答えになるほど、と納得する他なかった。

「太宰、その娘は今は」

「医務室で与謝野医師に任せています」

「そうか。異能特務課にも記録が無いとなると未確認の異能力者なのは間違いない。
出自等は娘が目覚めたら問うとする。容態の方はどうだ」

「何の異能かは分かりませんが彼女自身のものであろう異能で生命維持しているようでした。私の人間失格で一瞬瀕死になったようでしたし、与謝野医師が治療したのでそう時間もかからず起きるでしょう」

「生命維持できる異能……か」

「死ねない異能、死を拒む異能…その辺だとすれば彼女に危険が降りかかるでしょう。外傷で死なないなどポートマフィアや政府に勘づかれれば……」

続く言葉は室内の四人とも同様の言葉だろう。福沢はこくりと頷き、一口茶で喉を潤す。

死のない人間。
それはつまりある意味最強の道具になる。敵で一番厄介なのは死を恐れない兵隊だ。人間というのは等しく死を恐れるものだ。勿論、例外はあるのだが……しかし、死を恐れない者は何をするかわからない。敵と共に沈む者もいる。
つまり、非合法組織であるポートマフィアや政府には格好の兵隊である。利用価値がある。それに反して本人は死ねないからどんな痛みにも耐えるしかない。万が一敵に捕まり拷問に掛けられてもどこまで行っても死ねない。口を割らない限り。

「……太宰に一任する。娘が目覚め、危険な状態になったのなら太宰に業務凍結判断の指示を与える」

「ありがとうございます。
それでは」

あの子を誰かの家に運ぶわけにもいかず、社長をはじめ、太宰や敦、与謝野、乱歩、国木田は事務所に泊まることとなった。

*

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