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「だからね、どう考えても不公平だと思うのよ」

実際に指を折って数えたわけではないが、おそらく女がその台詞を口にするのは50回を超えているだろうと相手は思っていた。

「あぁ、そうだろうな」

“たいていは皆そう言うよ”

そしてこの相槌が返されたのも同じく50回は超えているだろう。
女が不公平だと漏らすたびに律儀に、そうだな、と返しているのだ。

コレをまた戻って報告したら要領が悪いと小言を言われるのだろうと思いつつも本人は努めて相槌を返すようにしていた。

だって、仕方ない。

「ねぇ。どうしてあたしの余命があと半年だなんて言うの?」

女は先ほどからコレばかりだ。

不公平だ。
どうしてあと半年なの?
なんで死ななくちゃいけないの?

不満をダダ漏れにする女に“上”のルールに基づいて余命を宣告にきた。
それが“彼女”の仕事だ。

職業は…この世界に則ってあらわすなら死神といったところだろうか。

「ねぇ、あなた名前はなんていうの?」
「ちょっと待て。丁度いいのを考える」
「なにそれ。今、考えるわけ?もういいわよ」

ねぇ、死神さん、と女は飽きもせずに彼女を呼ぶ。

ちなみに彼女にはエステリという名前があるのだが、それをわざわざ伝えるまでもないと思っている。相槌は打つが名前は名乗らないというのが彼女なりのルールだった。
(ちなみにコレは何の根拠もメリットもないただのコダワリのようなものらしい)

「なんだ」

死神といえば黒をイメージする人間が多いと聞くが、エステリの髪はゴージャスと言っても許されるほどのプラチナブロンドだった。それゆえに遭遇した人間は彼女の正体を信じない。

まったく人間というものは妙な固定観念が多すぎる。

「どう考えても不公平だと思うの」
「あぁそうだな」

“だから、お前の望みをひとつだけ叶えてやると言っている。余命を伸ばすこと以外なら何でも”

「そんなこと急に言われても困るじゃない?
お前はあと半年後に脳梗塞で帰らぬ人になる。だから今すぐ何か望みを言え、だなんて」

あぁそうだな、とエステリは丁寧な相槌を返す。
たとえあと100回女が不平を言おうと同じ数だけ頷くつもりだ。
そうだ、この世界はどこもかしこも不公平で成り立っているのだ、と。

「だいたい、あたしの顔を見てよ」

女の言う通りエステリは相手の顔をじっと見つめた。

「ね?今までの人生でただの一度だって綺麗だとも可愛いとも言われたこともないのよ」

あぁ、なるほど。
(相槌は絶対だ)

「誰かに持て囃されたり、褒められたり、愛されたり…もっと言えば気持ちいいセックスだってしたことがないわけなのよ」
「容姿とセックスは関係ないだろ」
(しまった。相槌。)

エステリのミスに気づくことなく、女は自嘲の笑みを溢している。

わかってないのね、死神さん。

「あのね、可愛くもないし愛されてもない女は、ただの穴なの。
突っ込んで揺さぶって出せばそれでいいわけ。こっちの都合なんてお構いなしなのよ」

“だからいつも痛いだけだった”

なるほどな、と今度こそ完璧な相槌を返す。

「それで?」
「なぁに」
「お前の望みは何だ?」
「考える時間も無いわけ?」
「契約はお早めに」
「優しくないのね」

不公平だわ、とまた口にするのかと思えば、女はお世辞にも綺麗とはいえない指を通りに向けた。

「なんだ」
「あの子」
「??」

女の指差す方向にはなるほど確かに1人の女がいた。
すらりとした体躯にサラサラの長い髪。細い脚には華奢なヒールの靴。
10人中9人が美人だと表現する種類の女だ。
白のワンピースが実によく似合っている。

「彼女がどうした?」
「あの子の人生をあたしに頂戴」

そんなこと無理でしょうけど、と女の眼が言っている。
まるで目の前の死神を嘲笑うかのように。

「あの女の人生をお前のものとすりかえればいいのか?」
「ええ、そう。できるの?」
「別にお前の寿命を延ばすわけじゃないから問題ない。お前の半年の寿命があの女のものになるだけだ」

それでいいのか?と死神は言う。
もちろんよ。あんな容姿に恵まれたら人生薔薇色だわ、と女は言う。


「契約成立だ」


パチンと死神が指を鳴らす。
(どうやら鎌を持っているというのは都市伝説らしい)




      ・
      ・
      ・
      ・
      ・



その15分後。
通りでは悲鳴が轟いていた。

往来で誰かが刺されたらしい。


「君がいけないんだ。僕がこんなに愛しているのに僕の愛を受け入れてくれないから…!
僕のものにならないなら君は生きていちゃいけない」

君が美し過ぎるからいけないんだよ。

そんな譫言と共に狂った男は、何度も何度も相手の女の胸を刺したとか。

何度も、何度も。
その白いワンピースが真紅に染まるまで。


「あの女の寿命の確認をすればよかったのに。死を恐れて早まるなんて、馬鹿の極みだ」


血に染まりゆく女の身体を見下ろしながら、死神が不敵に笑った。

(なるほど、確かにその血の色は薔薇に似ている。薔薇色の人生とやらは叶ったわけか)



酸欠
作者/黒原
Title/契約はお早めに
Theme/早まってしまった





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