(ギル視点)
《敗北宣言カウントダウン》
「ギル!オレ、お前のこと好きなんだけど!」
そう、いきなり告白されたのが数日前のこと。しかも、夕食時で、シャロンやブレイクなどがいる中で、だ。突然の、オズからの告白に、オレはナイフで自分の指をざくりと切ってしまったらしく、血しぶきがあがる。オズは「ちょっ・・大丈夫?!」と慌てて駆け寄ってきてくれて。
「い・・いや・・大丈夫・・だが・・・いきなりどうした?」
「え?そのまんまだけど?」
オズは可愛らしくちょこんと顔を傾ける。その仕草に胸がどくんと高鳴る。言うなれば、ハートを打ち抜かれた、というか。それを言うならば、オレはこれまでの人生で何回打ち抜かれているだろう・・とぼんやり考えた。
「それでっ?!」
オズがずいっとオレの膝に乗り、オレにずいっと迫り寄ってくる。この近距離だと、オズの整いすぎた顔だとか、ぱっちりの瞳だとか、形のよい唇がはっきり分かって・・・熱がいっきに上がりまくる。絶対今顔真っ赤な自信があるんだが!
「返事はっ?」
「いや・・その・・えと・・」
「ハイハーイ。そこでいったん止めときましょうネェー」
ブレイクがオズを軽々と持ち上げる。
「お嬢様には刺激が強すぎたみたいデスしー」
ふと見れば、シャロンは顔を真っ赤にさせてテーブルに突っ伏している。バカウサギはこの中、もくもくと食事を続けていやがるが。
「続きは部屋ででも、ベッドの上でもいいですカラ」
「そうしよっかなー」
「ぶっ・・ブレイクっ!」
ブレイクに助けを求めても、ブレイクはにやにや不吉な笑みを浮かべているだけだし。オズはオレの方を見て、「行こっか、ギル」と綺麗すぎる笑顔で微笑みかけてくるし!ど・・っ・・どうすればいいんだオレ・・!!
「ちょっ・・ギル?!」
ぐるぐる考えすぎて、自分の許容範囲を超えてしまったのだろう。オレは、その場で気絶してしまった。
* * *
それからというもの、オズはオレに猛烈にアタックしてくる。オズと遭遇するたび、「ギル好き!」ととびきりの笑顔で言ってきて、オレはその度顔を真っ赤にしながら逃げ回る。その繰り返し。
今も、オズから逃げてる途中で、屋敷の庭に生えている木の枝の上に、とりあえず隠れている。オズが行ってしまったのを見て、ほうっと安堵のため息をつく。すると隣からぷぷぷと笑い声が聞こえてきて・・こんな神出鬼没な奴はオレが知る中で1人しかいない。
「・・ブレイクか・・」
「いい加減応えてあげたらどうですカー?ギルバートくんも、オズくんのことが好きなんですよネェ」
「なっ・・なんで知ってるんだっ!!」
「・・・バレないと思ってましたカ・・・」
確かに、オレの初恋から今現在までも、オレが好きなのはオズだ。というか、オズしか見えない。オズがアヴィスに落とされてからも、ずっと大好きで、取り戻したくて。どれくらい好き?と聞かれたら、迷わず「死ぬほど」と即答できる自信がある。
正直、オズの告白は嬉しかった。決して叶わない恋だと思っていたから。だけど。
「オレにとって。オズは光なんだ」
きらきら輝いていて。純白な。
「だから、汚しちゃいけないんだ」
オレはもう、汚れてしまったから。ナイトレイ家の者になって、いろんな人間をこの手で殺して。この手で、オズを抱きしめることなんて。
「・・・全く、成長しませんネェ、ギルバートくんは」
「はぁ?!」
「オズくん、泣いてましたヨ?さっき」
「つっ・・・!本当かっ?!」
「あれだけ好きな人に露骨に避けられたら、誰でも傷つくでしょうガ。ワタシは嫌いなんデスヨ。子供に泣かれるのが。君がどうワカメっぽくじめじめ考えているのか知りませんガネ」
「う・・・」
「とりあえず部屋にでも行ってあげたらどうデスか?」
「そ・・そうする!」
ひょいっと木から飛び降りて、そこでお礼を言っとかなきゃだよな・・と見上げたら、もうそこにはブレイクはいなかった。ほんと、何者なんだあいつ・・?
ともあれ、オレは小走りでオズの部屋の前まで行き、こんこんとノックをする。しばらく待ったが返事はない。
「オズ・・?入るぞ」
ドアを開けたら、ベッドの上に、布団にくるまって寝ているオズがいた。起こさないようにと近寄り、そっとしゃがみこむ。オズの顔には泣いた跡があって、ずきんと心が痛んだ。
「ごめんな・・オズ。ずっと、逃げてて」
さらさらの金髪を指ですく。
なんて、オレはバカだったのだろう。お前を辛い気持ちにさせてしまって。大切で、大好きな人には、いつだって笑っていてほしいのに。
「オレも。お前が大好きだ」
言ってしまって、ぼうっと顔が赤くなる。それに自分で気づいて、頭を抱える。寝ているオズに告白するのですらこんななら、起きてるオズに伝えたら、オレはどうなるのだろう。死ぬんじゃないのか、オレ・・・
「どうすれば・・」
「ふふふ」
え。なんだ幻聴か・・?オズの笑い声が聞こえたんだが・・でもオズは寝てるし・・と、ベッドの方を見たら。オズがにこにこと微笑んでいた。
「おおおおオズっ!いっいつから!」
「んー?最初から」
「なっ・・」
ということはオレの告白もきっちり聞かれてしまってたわけで。あわあわと慌てるオレを、オズがぐいっと引っ張る。体勢を崩したオレは、オズの体を挟むように両手をつき・・まるでオズを押し倒しているような・・・
「おっオズ!」
これはやばい。自分でしたのにやはり恥ずかしいのだろう、オズの頬も少し赤らんでいて、変な気持ちになる。というかオレも男なんだしょうがないだろう!
そんな葛藤をしているオレの気を知ってか知らずか、オズはさらに己の腕をオレの首に絡める。まるで甘えるようなオズの行為に、頭がふらふらする。
「ギルも、オレのこと好きなんだよね?」
「あ・・えと・・」
「嫌い・・なの?」
「まさか!むしろ愛してる!!」
そう告げればオズは優しく笑って、「じゃ、両思いだね」と耳元で囁いた。
『両思い』
絶対叶うことがないと思っていたそれに、オレも自然と笑みがこぼれる。
「ねぇ、キスしよ?」
「こ・・この体勢でかっ?」
それはいろいろとやばい気が・・
「だめ・・?」
瞳をうるうるさせて、オレを見上げるオズにオレがかなうわけなんかなく。
「愛してる・・」
そっと、オレはオズにキスした。
3、2、1・・・あなたに夢中!
へたれギルさんでした(笑
来年(今年?)管理人の受験のため、11月中には更新を完全にストップしようと思ってます。本当にすいません(>_<)それまでは出来るだけ更新しようと思ってます!たぶん・・←
お題は『kara no kiss』さまより