(オズ目線)











《神様、この想いを伝えるのは罪ですか》















「なにジメジメしてるんですカ、ギルバートくん」
「うるせぇ!ワカメじゃないっていつも言ってるだろ!」
「ワカメなんて言いましたっけ?ワタシは」
「・・・・・あ・・」
「相変わらずからかいがいがありますネェ、君は」



あ・・またやってる。
ブレイクとギルは仲がいい。そりゃあ、まあ、オレは10年間いなくて、その分はしょうがないけれども。昔は、オレを見るとすぐ駆け寄ってきて、オレぐらいにしか気さくにしゃべれなかったのに。今ではもう、ブレイクやシャロンちゃん、アリスやレイムさんとも気さくに話している。主人としては、それを喜ぶべきなのかもしれない。というか、喜ばなきゃだと思う。だけど。



(もやもやする)



いらいらする。どうして?昔は心配してたじゃないか。ギルはこんなんで立派な大人になれるのかなーって。ねぇ、どうして?
そんなことをモヤモヤ考えていると、そんなオレの様子が気になったのか、ギルが慌てて駆け寄ってきた。

「オズ?どうした?具合でも悪いのか?」

ギルの手のひらが、オレの頬に触れてくる。手袋ごしなのに、暖かさが伝わってきて、妙に心地よい。

「ううん。なんでもないよ」
「しかし・・っ、お前最近変だぞ?よくぼんやりしてて」
「なんでもないってば。ギルは心配性だね」

そんなところは変わってないよな、と頬を緩める。そんなオレを見て、ギルはなぜか、わずかに顔を赤らめちゃって・・・さっと顔をそらした。

「その・・街になっ、新しいカフェができたらしくて・・そこのケーキが絶品らしくてだな・・っ、今からでも行かないかっ?」
「へ・・?」
「いや、お前が暇だったらでいいんだが!」
「ギル・・甘いもの苦手じゃなかった・・?」

オレやブレイクが甘いもの好きだからよく食べているんだけど、ギルは進んで食べようとはしない。いつも、よくそんなに甘いものが食べれるな・・と感心しながら呆れているだけ。なのに。

「い・・いや・・!この際、オレも克服しようかなぁ・・と!な、ブレイク!」
「ワタシに振らないでくださいヨ、このヘタレワカメ。はっきり言えばいいじゃないデスか。一緒に出かけたいだけ」
「わーっ!!言うなっ!」

ギルが慌ててブレイクの言葉を遮る。2人はこそこそと話して、ギルは顔を真っ赤にさせてしまってる。


(もやもやする)


よく見ればシャロンちゃんも心得た感じで笑ってるし。嫌だ。なんで?どうしてこんなに胸が痛いの?どうして?ギルが他の人と仲良くしているのを見ると、心が重くなって、泣きそうになる。


「オズ?」


そんなに、ブレイクたちが好きなら、ブレイクたちと行けばいいじゃん。心がそう叫んでいるけど、口から出た言葉は、「いいよ」
そう言うと、ギルは顔をぱあっと綻ばせた。

「わ・・分かった!じゃあ、10分後に玄関に来てくれ」
「ん・・・」


オレは立ち上がり、自室に向かう。そっと胸に手を添えてみて、気がついた。心が軽くなっていて、ぽかぽかしてる。

「なんだろう・・これ」











  *  *  *  *








結局、服選びに手間取ってしまって、待ち合わせの玄関に着いたのは、それから30分後だった。
髪のはねを押さえつつ、階段を駆け下りる。そして、見つけた、いつもの黒いコート姿のギル。

「ギル!ごめ・・」

そこまで言いかけて、足が動かなくなった。
柱の影で見えなかったけど、ギルの隣にはレイムさんが居て、パンドラ関係を思われる書類を手に、親密そうに話し合っていた。あまり人には知られたくない話なのだろう、本当に2人がくっついているように見えて。
どくん、と心臓が波打つ。この場から逃げ出したくなるような衝動にかられる。
ギルがふと書類から顔をあげて・・・オレと目があった。

「オズ」
「どうしたの・・?お仕事?」
「悪い、オズ、その・・・・」

それを遮って、レイムさんが口を開く。

「オズさま、申し訳ありません。ギルバートさまにパンドラへ至急おこしになるようにと・・・」

レイムさんは心底困ったように眉を下げる。ギルも、困ったように頭をかいている。

「しかし・・オレはこれから用事が・・」
「緊急の用とのことですので・・申し訳ありません・・」
「だが・・」
「大丈夫だよ、ギル。また今度行こう?緊急ならしょうがないって」

ちゃんと、笑えているだろうか。ギルを無理にひきとめちゃいけない。わがままな子になりたくない。

「でも・・」
「ほら、早く。オレは読みかけの本があるからさ。いってらっしゃい」

それだけ早口に告げると、オレは降りてくる途中だった階段を上り始める。
ギルは少し戸惑っていたみたいだけど、しばらくしてレイムさんと一緒に屋敷を出て行く音がした。
ドアが完全に閉まってから、オレは自室に向かって走り出した。部屋に入り、ベッドに飛び込む。


「つっ・・・なんだよ、この気持ち・・!!」



痛い。痛くて、心が悲鳴をあげる。




どうして?他の人とギルが一緒にいると、もやもやする。そこは、オレの場所なのに、って思っちゃう。側にいてほしい。オレだけを、見ていてほしい。他の人なんか、見ないで。





「ああ、そうか・・」






オレは、お前に恋をしてしまったのか。





自覚してしまったら、もう。想いが次々と溢れてくる。
『好き』
ねぇ、恋って、すごくどきどきして、楽しいものだと本に書いてあったのに。
どうして?心が痛い。
オレは男、ギルも男。オレは主人、ギルは従者。


オレが気持ちを伝えたら、ギルは気味悪がって、オレから離れていってしまうかもしれない。

言っちゃいけない。
でも、ギルを独り占めしたい。オレだけを見ててほしい。



相反する気持ちが、心をぎゅうっと締め付ける。


枕に顔を押し付けて、瞳を閉じる。
そこには、愛するあなたの姿。


















久々すぎる更新・・すいません!
これは、完全に両想いじゃね?お前ら(笑 というコンセプトです←
これからオズはギルを避けまくって、ギルがたまらず告白!というハッピーエンドが待ってます。きっと(笑
お題は『Chien11』さまの「切ない片想いで5題」より





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