※学パロ

 









《それが僕らの恋愛戦争 2》












「あら、お帰り、エリオット」
「ただいま」
「今日も今から稽古するの?」
「ああ」


ナイトレイ家の敷地に駆け込むと、姉のヴァネッサから声をかけられた。それに答え、オレは稽古場へと向かう。稽古はすでに日課になっていて、体が自然に動く。頭の中は、別のことでいっぱいなのに、だ。頭の中には、ついさっきのこと・・・オズ=べザリウスと口論したときの、オズの顔でいっぱいだった。人形のような、綺麗すぎる顔をゆがめ、エメラルドの瞳を潤ませたあいつの顔。その顔はあきらかに傷ついた顔で。そんな表情をさせてしまったのは誰か?・・・無論、オレである。


「くそっ・・・」


稽古場につくと、制服を脱ぎ、練習着にさっさと着替えた。この稽古場は、ナイトレイ家の人間専用なので、他には誰もいない。しんとしたその空気を振り切るように、オレは素振りを始める。そして、あの時のことを思い出していた。






そう。それは、今から5年ほど前の話。
とある剣術の大会で、オレは見学に行ったのだった。当時オレはまだ10歳ほど。その大会に年齢制限はなかったが、まだ出場して戦えるほどではない。
目の前で繰り広げられる試合を見て、オレは興奮した。こんなにも、世界には強い奴がいるのか!と。あまりにも熱中しすぎて、時間など忘れてしまうほどで。いよいよ決勝戦となり、対戦相手らが位置についた。一方は、去年の優勝者で、かつ今年の優勝候補の大男。そして、もう1人は・・・オレと同い年くらいの子供。小柄で、金の髪が場違いなほどに輝いていて。女かと思うほどの整った顔立ち。見間違えることは決してない。それは、お隣に住む、幼馴染、オズ=べザリウスだったのだから。
オズは年も近かったせいか、いつも遊んでいた。明るくて、元気で。あいつの笑顔を見ると、心が温かくなって、嬉しくて。でも、この気持ちが何なのかは分からなかったけど。
だから親がなんと言おうとも、全く気にしなかった。べザリウスは、ずっと昔からの敵で仲良くしてはならないとか。憎まなければならないとか。

そんなオズが現れて、オレはまず、オズが間違って来てしまったのでは、と考えた。オズもべザリウスの嫡子として剣術を習っているとは知っていたけれど、実際には見たことなどなかったし、オズが剣を振り回しているところなど想像できないから。
 そんなしている内に、はじめの合図が出され・・・オズに向かって、優勝候補の男が剣を振り下ろす。


「オズ!」


そして、オズはその剣を、己の剣で軽くあしらった。
予想外のことに、男が驚いたが、すぐにまた何度も剣を振るう。だが、オズは涼しい顔でそれらを受け流す。

「・・・・」

 オレはその光景から目が離せなかった。べザリウス家に受け継がれる雪のように白い。それを操り、オズはまるで舞うように動く。跳ねるたびに金髪がさらさらとなびき・・・あまりにも華麗すぎだった。
しばらくそれが続き、大男のペースが乱れた瞬間、オズは剣を振り下ろし・・・男の刀を真っ二つに割った。
審判が勝者の名を告げ、会場が熱気に包まれる。
あまりのすごさに、熱に浮かされたようにぼーっとしていると、隣にいた男たちの声で、目が覚めた。

「あの子供って・・べザリウスの嫡子だよな?」
「ああ。『歴代最強』をうたわれている子供だよ」


その後も続くオズの話に、オレはそっとその場を後にした。
 
頭の中で、ある時、ヴァネッサがオレに言った言葉が流れた。



『いい?エリオット。男の子は強くなくてはいけないのよ』
『ああ?なんでだよ』
『たとえばね、将来好きな人ができたとするじゃない。それで、その子を守りきれるぐらい強くならなきゃでしょ?ナイトレイ家の子供なら、大切なものを守れるくらいに強くなくてはね』




ヴァネッサ。オレはどうすればいい?
オレは、本当にその時、気づいたんだ。オズのことが、好きなんだって。だけど、その大切な人は、あまりにも遠くにいて。



「あ、エリオット!」


人ごみの中から、ひょこっとオズが現れた。手に賞状を携え、オレのもとへとパタパタと駆け寄ってくる。

「来てたんだ、エリオット」
「あ・・・ああ」
「途中で、オレの名前を呼ぶ声が聞こえて。嬉しかった」

はにかむオズ。体がぼっと熱くなる。オズが好きだと気づいてしまったからか、ものすごい恥ずかしい。

「エリオット?顔・・赤いよ?」

心配してオズがオレの額に手を伸ばし・・・・オレはそれを振り払った。

「さっ・・触るなっ!」
「え・・エリオット・・?!」
「今日から、お前はオレの敵だ!なんとしてでも、お前を越えてみせるっ!」

きょとんとしたエメラルドの瞳を、視界から振り払い、その場から逃げ出した。















「398、399、400」

素振りを400回して、オレは汗をタオルで拭う。
 
それからだった。オズが一切公式の試合に出なくなったのは。理由は分からない。でもオレは思った。オズは、オレに同情したんだと。



オレは、オズが嫌いだ。人のために、自分のことを簡単に捨ててしまうオズが。
オレは、オズが好きだ。こぼれるような笑顔で笑う、オズが。


この気持ちはぐちゃぐちゃ混ざり合って。いつしか、オズに一方的に攻撃をしかけるようになった。それでも、オズは反撃を一切しないけれど。

「オズ・・・」


そう呟いた時だった。
稽古場のドアが開いたのは。
ドアを開け、入ってきた人物は、真っ白の剣を握り締めていた。そして、エメラルドの瞳を細め、にこりと微笑んで曰く。












「私は、オズ=べザリウスと申します。エリオット・・・・エリオット=ナイトレイに決闘を申し込みに来ました」













・・・は?










 
続きます。あと1回で終わる予定です。エリオットの剣が黒色だから、オズなら白色だよね〜という安易な考え(笑
お題は『kara no kiss』さまより



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