《午前三時の戸惑い》
オレは今、大変な状況だ。まじで。
時計を見ると、もうすぐ夜中の3時かな?というところ。もちろん外は真っ暗。ベッドのには、オレ、ギルバートと、片思い中のオレの主人であるオズがいる。
なぜこんな美味しい状況に?!オレが聞きたい。なんか妙に温かくて、目を開けてみたら、同じベッドの中にオズが眠っていて。まず、自分の服装とオズの服装を確かめた。うん。ちゃんとパジャマを着てある。そして、部屋の確認。うん。オレの部屋だ。これでオズの部屋だったら、180パーセントオレが寝込みを襲ったんだろうけど!でも、オレの部屋だから・・・オズが来たのか?!まさかオレに夜這い・・・・いやいやいやいや。夢を見すぎだろう、ギルバート!いや・・でも・・それが本当なら、かなり・・いや死ぬほど嬉しいんだが。
とりあえず、オズを起こしてみることにした。
「おっ・・オズ」
「むぅーもうちょっと・・」
そんな可愛い声で言われたら、とことんまで寝かしてしまうじゃないか!
確かに、いつも起こしに行ったら、あまりの可愛いさに結局起こせなくて、ブレイクからからかわれている。でもしょうがないじゃないか!可愛いんだから!
「お・・オズ。頼む、起きれくれ」
「んーやだぁ」
「頼むから。オレがいろいろやばいんだ、ほんと」
「んー?」
オズがしぶしぶ、と瞳を開ける。とろんとしたエメラルドの瞳に見つめられて、思わず見惚れてしまい、言葉を失う。
「どうしたの?」
「あ・・お・・オズ、お前どうしてオレのベッドの中に・・」
「オレがいちゃ悪いのー?」
「いや!悪くない!」
「ならいいじゃん」
オズが、再びベッドに潜り込もうとするのを必死に押さえる。オズが「何だよもー」とオレを睨む。オズは低血圧だから、朝とかに弱くて寝起きは最悪。だけど、オズみたいな可愛い容姿で睨まれてもあんまり怖くない。むしろ歓迎。
「どうしたんだ?怖い夢でも見たのか?」
「ギルと一緒にするなー」
「なっ・・オレはもう怖い夢を見ても1人で寝れるようになったんだからなっ」
小さい頃は、よく怖い夢を見たら、オズに泣きついていた。すると、オズはいつも、「じゃあ、オレと一緒に寝る?」と言ってくれてた。
でも、オズがアヴィスに落とされ、『失う』という本当の怖さを知ったオレは、次第に怖い夢を見ても怖がらないようになった。それよりも、オズがいなくなったということがショックで、怖くて、恐ろしかったから。
「もう、あの頃のオレじゃないんだ」
その呟きが聞こえたのか、オズは目をこすりながら上半身を起こした。そして、座っているオレの元まで来て、そっとオレを抱きしめた。ふわっとオズの匂いが漂う。至近距離にオズの顔があるわ、オズの体がぴったりと密着しているわで、オレの頭をパニック常態になる。
「オズ?!」
「だいじょーぶ。オレはここにいるから」
「オズ・・」
「だから、いい子で寝ようねーギル」
「お・・お前、まだ寝ぼけてるだろ!」
「分かった、分かった。明日も、ギルで遊んだげるから。もう寝ようねー」
「オレで遊ぶって?!」
やっぱり、お前は、小さい頃オレで遊んでたのか!
遊び道具感覚だと?!
「オレはお前の従者だっ!」
「知ってるよー。でも、ギルは猫苦手だし、ヘタレだし従者っぽくないよねー」
「うっ・・・」
反論できない。確かに、オレは、お前にとって完璧な従者にはなっていないかもしれない。せめて、オズの力になりたいのに。
「ぎーる?」
急に黙りこくったオレに、オズが心配そうに覗き込んできた。
いかんいかん。主人に余計な心配をかけされるなんて。
「何でもない」
「そーお?」
「オレは・・オズにとって、何なんだろうな・・・」
従者にもなりきれない、オレの立場は。
すると、オズはオレの首にそっと腕をまわした。そのせいで、さらに近まる2人の距離。
「オレは、ギルのこと従者だとは思ってないよー」
「そ・・そうだよな」
「だって、オレ、ギルのこと大好きだもん」
「・・へ?」
「だーい好きだから。従者とは、恋人になれないでしょ?」
「こっ・・恋人・・っ・・」
ままままままさか。オズも・・オレと・・同じ気持ち・・なのか・・?
「お・・オズ・・その『好き』は、友達に対しての『好き』じゃないよな・・?」
「当たり前じゃん」
「じゃあ・・恋人としての『好き』?」
「ん・・」
なんてことだ。嬉しすぎる。頬をつねってみる。うん。夢じゃない。
「お・・オズ・・!オレも・・お前のこと・・・」
「すーすー」
すーすー・・・?
ふと、オズを見下ろすと、オズは気持ちよさそうに夢の中だ。寝ちゃったか。
オレは、強くオズを抱きしめる。オズが目を覚ましたら、オレの気持ちをきちんと伝えよう。そう決めて、オレも瞼を閉じた。
翌朝。
「んーおはよー」
「おっ・・おはよう、オズっ」
「あー昨日は、ギルのとこで寝ちゃったんだなぁ。ギルと一緒だとよく寝れるんだよねぇ」
「あ・・オズ。昨日のことなんだけど・・」
「なに?昨日のことって?」
「い・・いや・・その・・・覚えてないか?午前3時ごろなんだが、オレに言ったこと」
オズはきょとんと首をかしげる。
演技・・ではない。まさか・・寝ぼけてただけ?!
「本当に覚えてないのか?!」
「う・・うん」
「オレに『好き』って言ったこと」
「つっ・・!!オレそんなこと言ったの?!」
オズが顔を真っ赤にさせる。
「ねっ・・寝ぼけてただけだから!」
「そ・・そうなのか・・」
「そうなの!」
オズの迫力に押され、オレはしぶしぶオズの「忘れて!」という言葉に頷いてしまう。だけど、忘れるはずない。例え本当じゃなくて、オレにとっては大切なことだから。心にしまっておくとしよう。
そんなオレは気づかなかった。
オズが言った言葉に。
「もーっ。なんで本当のこと言っちゃったんだろ・・オレ」
無意識の本音
寝ぼけすぎな気がするけど・・うん、気にしない←
これから2人は、悩みまくる予定です(笑
お題は『Chien11』さまより