※学パロ

 






《それが僕らの恋愛戦争》










「オズ=べザリウス覚悟おぉぉ!!」
 背後からそんな雄たけびが聞こえ、オレに向かって剣がふるわれる。ちなみに、その剣は竹刀とかじゃなくて、本物。大事に手入れされてるから、切れ味2割り増し。 オレは、さらっと避け、その襲撃犯に足をかける。すると、面白いくらいにすっ転んだ。


「何しやがる!」
「それはオレの言葉だからね、エリオット。毎朝毎朝」
「うるせぇ!オレと勝負しろっ!」
「やだ」


じゃあ、先行くね、と手をひらひらさせてオレは学園へと向かう。
 

こんな毎日。





《それが僕らの恋愛戦争》




オレの名前は襲撃犯の言うようにオズ=べザリウス。近くにパンドラ学園に通っている学生。まぁ、ただの学生ってわけじゃない・・のかな?
オレの家は代々、剣術の名門で、オレは次期跡継ぎになる予定で。
 
一方、さっきの襲撃犯・エリオット=ナイトレイも、同じく剣術の名門ナイトレイ家の次期跡継ぎ。何の因果か知らないけど、べザリウス家とナイトレイ家は隣同士。しかも、ナイトレイは完全にべザリウスを敵対視してるっぽくて。それはずーっと前の代からだったんだけど、オレらの代は特にひどい。というか、毎日殺されかけてるからね?!オレは。学校内では剣を振り回すとかさすがにしないけど、勉強面とかでもかなり敵対視してくるし。会うと必ずと言って良いほど、口論スタート。
ほんと、何でこんなことになってるんだろう・・・。オレは。

 


「オレは、お前のことが」



思わず出た言葉に、オレは口をおさえた。
うん、周りには誰もいない。よかった、よかった。

そう。オレは、エリオットが好きなのです。小さい頃から、ずっと。
でも、超えなきゃいけない壁は大きすぎて。性別、家柄。もちろん、エリオットがオレのことを好きになってくれるなんて、あるわけないけどさ。


ため息をオレは、飲み込む。














教室に入って、友達のリーオとかとおしゃべりしていると、ガラリと扉が開いて、エリオットが入ってきた。そう、同じクラスなんだよねぇ。オレたち。もちろんオレは嬉しいんだけど・・・

「あ・・おはよ、エリオット」

そういえばまだ挨拶してなかったや。そう思ってこわごわ声をかけてみる。エリオットはこっちを見ると、きっと睨む。お・・鬼のようなんだけど。でも、決してエリオットは無視をしたりしない。確かに、ものすごい形相で睨まれるけど。

「・・・おはよう」

すぐそらされる顔。それでも嬉しい。嫌われてるけど、絶対返事を返してくれる。その少しぶっきらぼうなところが、たまらなく大好き。
にやける顔が抑えられない。それを見てリーオはくすりと笑って、

「相変わらず、エリオットのこと好きなんだね」
「・・うんっ」
「でも、まだ毎朝襲撃してくるんでしょ?」
「そうだよ!オレのことが気に食わないのは分かるけどさっ、ひどすぎじゃない?」
「不器用なんだよ、きっと」
「ん?オレのこと?」

リーオは軽く頭を振って。どっともだよ、と言った。どっちもって?と首を傾げるけど、リーオは黙ったまま微笑んでるだけ。

「リーオ?」
「ねぇ、オズくん、僕のこと好き?」
「へ?どうしたのいきなり」
「いいから」
「えっと・・好きだよ?もちろん」

そう答えると、リーオは「僕もだよ」と答えて。何だろう、リーオの目線が違うほうにいってる気がする。っていうか、いきなりなに?

「リーオ?」
「あ、ごめん。気にしないで」

そういえばねーとリーオがまた別の話題を持ち出して、それに夢中になって、そのことはすっかり忘れていた。帰り道、オレの好きな人から声をかけられるまで。










「お前、あのリーオって奴が好きなの?」

リーオと道を別れて、ほんと、あと少しで我が家が見えるな・・って時だった。後ろから声をかけられて・・・もちろん聞き間違えることのない、エリオットの声。
反射的に、エリオットと距離をとり、身構える。だけど、エリオットは自分の剣をしっかりしまっているし・・あれ?

「ど・・どうしたの?」
「どうしたの?じゃねーよ。何構えてんだ」
「だってエリオット、すぐ攻撃してくるでしょ。いつも」
「うっ・・・今はしねぇから!」
「わ・・分かった」

オレは気をゆるめて、エリオットと向かい合う。思えば、こんな風に何もせずに向かい合うなんて久しぶりかも。ああ・・・懐かしいなぁ。

「・・何笑ってんだよ」
「いーや?なんか、懐かしいなぁって。昔はさ、オレたち仲良しだったじゃん。なのに今は、完全に敵対視されてる・・っていうか嫌われ」
「そ・・それは・・っ!!」

オレの言葉はエリオットにさえぎられる。オレが驚いて顔を上げると、オレをきっと見つめている。

「お前が・・オレと勝負しないからだ!」
「いつもしてるじゃん」
「お前は本気を出してないだろ!ただ避けてるだけだ!!あの時から!ずっと!」

あの時。
エリオットの言う『あの時』 は、おそらくオレが思いだしてるときのことと一緒だと思う。忘れはしない。だって、あの時から全てが変わったんだから。
オレはエリオットに恋をして。
エリオットはオレを敵対視するようになって。

「オレは・・」
「お前はあの時から、一切、公の場に出てないだろ!」
「そ・・それはっ・・ただ面倒くさかったから」
「黙れ!お前はオレを・・惨めにしたいのか?!」

そんな・・

「違うよ!」
「黙れ!オレは、お前なんか、大嫌いだ!!」


くるりとオレに背を向け、駆け出していくエリオット。
オレは、ただそれを見つめるだけ。頭の中は、エリオットの言葉が、繰り返されてる。





『お前なんか、大嫌いだ!!』




大嫌いまでいっちゃったか。そうだよね。エリオットにとって、オレはひどいことをしちゃったもんね。
君を嫌いになれたら、どんなに楽だろう。ためしに口に出してみようとする。


「オレも・・エリオットなんて・・・」


口からこぼれおちたのは、『嫌い』でも『大嫌い』でもなく。



「大好きだもん・・」











続きます。この2人はやっぱり喧嘩しながら、っていう恋がぴったりです。
お題は『kara no kiss』さまより



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