※学パロ









《ささやかな願掛け》








『好きな人の写真の裏に思いを書いて、定期入れにずーっと入れてたら、いつか恋が叶う』






そんな噂が今、女の子たちの中ではやっている。
可愛いなぁ、と思う反面、そんなのありえないだろーとも思う。そんなんで恋が叶ったら、片思いしてる奴は苦労しないっての!それが、オレ、オズ=べザリウスの意見。だった。


なぜ過去形かって?それは、オレも今、恋してるから。




ちらりと横の席を盗み見る。
そこに居るのは、色素の薄いとげとげしている髪に、青い綺麗な瞳の持ち主で、かつこのパンドラ学園の生徒会長である・・・エリオット=ナイトレイだ。
今は授業中で、エリオットもまじめに黒板の文字をノートに写している。
その真剣な瞳に、不覚にもどきんとする。

目がはなせなくなって。ああ・・オレって恋してるんだなぁ、って思う。





「オズ?ちゃんと聞いてるか?」



やばい。国語の先生である、ギルバート先生が、オレに声をかけてくる。
途端に我に返って、前を見る。

「ちゃんと聞いてますって、ギルバート先生」
「ほんとか?」
「当たり前じゃないですか。オレ、先生のファンだもーん」

おどけてみせると、教室からどっと笑い声が響く。
ギルバート先生も、困った風に笑ってて。

ふと、横を見てみると、エリオットがこっちを見つめていることに気がついた。
ん?と首をかしげてみせると、顔を真っ赤にして、顔をそらした。
む。そんなあからさまに反らさなくてもいいじゃん。頬を膨らませていたら、エリオットが横目で、


「ばーか」


なんて言ってくるから、

「エリオットのばーか」

すでに条件反射です、はい。いったい何回繰り返したか分からない、この会話。
内容なさすぎでしょ。オレってそんなにバカそうな顔してるの?!

いつもいつも、こういう会話ばっかり。
怒って、喧嘩して。恋人になるどころじゃない。絶対、嫌われるし、「は?」って言われるのが目に見える。「お前バカじゃねーの?男同士とか気持ち悪い」とかも言われそう。
だけど、何度もあきらめようとしても、やっぱり好きすぎて。


はぁ、と大きなため息をひとつ。

そんな時、あの願掛けの話を聞いたから。
もう嘘でもなんでもいい。とにかくワラをもすがってやる!そんな気持ちでついしちゃったんだけど・・・・・・








オレはふと、ギルバート先生の目を盗んで、定期入れを開いた。
そこには、エリオットの写真。なんかブレイク先生に相談したら、もらったんだけど。
 
ほんと、男のオレでもほれぼれしちゃうくらいの男前のエリオット。
ってか、オレ、女々しいな。好きな人の写真をゲットして、持ち歩いて、ニヤニヤしてるなんて。
パタンと定期入れを閉めて、また大きくため息。




こんなの。本当に叶うのかなぁ・・・・
















放課後。課題を先生に提出して、教室に帰ってくると、そこには当たり前に誰もいなかった。
がらんとした教室に足を踏み入れ、自分の机へ向かう。その時。

「ん?」

何か落ちてる。
ちょうど、オレとエリオットの机の中間あたりにあったそれを拾う。
定期入れ・・かな?落とした人困ってるだろうなぁ。届けてあげないと。
そう思って定期入れを開く。そこで、手が止まった。




「・・へ?」





そこには、オレの写真があった。すごい笑顔でピースをこっちに向けてる。
これって・・・あれだよね?あの、おまじないだよね?!
うわ。何か恥ずかしいかも。オレは思わず、赤らんだ顔を手で覆った。
ってかこれ誰のもの・・・




がらん





扉が開いた音がして、慌ててオレはドアの方を振り向いて・・・口をあんぐりと開けた。
だって、そこには・・


「エリオット・・・?」
「あぁ?オズか?お前何し・・・」


エリオットはたぶん生徒会の仕事だったらしく、教室に1人でいるオレに、眉をひそめて・・・・オレの手元を見て、かっと目を見開いた。



「おまっ・・!!!それっ・・・!!」
「ああ、これ?何か落し物っぽいんだけど・・・」


言うやいなや、エリオットはずかずかとオレに近づいてきて、その定期入れをオレから取り上げた。その間3秒。
エリオットは定期入れを懐にしまい・・・ってか、それエリオットのものなのっ?!


「それ・・っ、エリオットのっ?!」
「そうだよ!文句あるか!」
「いや・・ない・・けど」
「なっ・・中身・・見てないだろうなっ?!」



反射で、「見ていない」と言っちゃった。
そう言うと、エリオットは目を細め、良かった・・とほうっと息をはいた。

「な・・中に何か大切なもの入ってるの?」
「ま・・まぁな!・・ってか、お前帰れ!もう暗くなってきてるぞ!」
「えっ、もうそんな時間っ?!」


時計を見ると、とっくに下校時間は過ぎている。窓の外も、暗くなっているし。
慌てだしたオレを見て、エリオットはぷっと吹き出した。

「笑うなよ!」
「悪い、悪い。じゃあ、オレ先帰るから。定期取りに来ただけだったからな」


エリオットが、じゃあな、と手を軽く振りながら、オレの横を通り過ぎる。


どくんどくん。


心臓が、ものすごい速さで音を刻んでいる。
ねぇエリオット。定期入れにオレの写真。これってさ、期待していいのかな?自惚れていいのかな?


ねぇ、エリオット。オレもさ、同じことしてるんだ。
定期入れにお前の写真。すごく大事にしているんだ。



ねぇ。








「エリオットっ!」




オレの言葉に、今まさに教室を出ようとしていたエリオットがくるり振り向いた。


「何だよ?」





ささやかな願掛けに、想いを詰め込んで








「オレ、お前のこと・・・・」
















なぜかエリオズはパロディが多いです(笑
 
お題は『恋したくなるお題 』さまの「無自覚な恋の仕草」より



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