《2.今日からお世話になります!》
















ジリリリ・・・


目覚ましの音に、オレは勢いよく体を起こす。
今日は日曜日で、学校は休みなのに起きてしまった。どうやら、昨日慌てすぎて目覚ましをオフにするのを忘れてしまっていたらしい。
ふわわとあくびをひとつ。
そして、ふと隣に目をやれば・・・・



 

やはり、夢じゃない。




昨日出会った魔法使いの少年・・・オズがぐっすりと眠っている。








あれから、オレの家へ連れて行き、あつあつのオムレツを出すと、オズは目を輝かせながらたいらげた。
4回もおかわりしたんだから、相当お腹減っていたのだろう。
食べ終わると、疲れていたのかうとうとし始め、布団を引いてやると、オズはぼふんと倒れこみ、死んだように眠ったのだ。




さっきの目覚ましの音ですら目を覚まさないのだから、よっぽど疲れていたのか。
まだ見た目からして、15歳くらいの少年なのに。

オレは、起こしてしまわぬよう、忍び足で寝室を出て、キッチンへ向かう。














1時間ほどして、オズが目をこすりながらリビングに来た。
おそらく朝食の匂いに誘われたのだろう。すでに机にはほかほかのパンやらスープやらが並んでいる。
オズはそれらに目をきらきらと輝かせた。



「昨日も思ったけど、あんた、料理がうまいな!」
「そりゃどうも」
「そういえば・・あんたの名前は?」


オズは早速机につき、パンに手を伸ばす。
 

「ギルバート。ギルバート・ナイトレイだ」
「ふーん。じゃ、ギルでいい?」
「あ・・ああ」
「じゃ、ギル。ギルは何のお仕事してるの?」

『ギル』という愛称が心地よく耳に響く。
よしんば、明らかに年下にからタメ口だとしても、だ。変な気はしない。むしろ歓迎・・・・ってオレは何を考えて・・・っ・・・


「・・・ギル?どうしたの?」
「い・・いや!あ、オレは、先生をしているんだ」
「へぇ!すごい!何を教えているの?どの分野の術?」
「術じゃないんだが・・国語だな」
「国語?」

オズがきょとんと首を傾げる。

「あー言葉の使い方とか。古文や漢文とかを教えてるんだ」

オズは、ふむふむと頷いている。

「えっと・・・お・・オズは?学校とかは行ってないのか?」
「オレ?オレは、もう卒業したよ?」

え。その年で?

「卒業って・・・早いな」
「飛び級したからだいぶ早く卒業できたんだけどね。今は、第1級国家認定魔法使いとして、任務でこの世界に来てる」
「はぁ・・・」


なんか、完全にファンタジーの世界だ。昨日のことを目撃してなかったら、まず信じなかっただろう。
それからオズは自分のことについていろいろと教えてくれた。
まず、オズが来た『こことは違う世界』には、オズのような魔法使いや魔女が当たり前のように存在しているらしい。人々は皆、生まれつき魔力が備わっていて・・・ピンからキリまで人それぞれらしいが・・・日常生活にも使われているほど。
さらに、子供たちは魔法学校というものに通い、卒業し、力あるものはそのまま『国家認定魔法使い』となる。ちなみに、それになれるのはごくわずかで、人々の憧れで。オズは、至上最年少の魔法使いらしい。
そして、それ以上に驚いたことに・・・


「オレ、25歳だから」
「うっ嘘だろ!オレより年上には見えな・・っ」

そう言うと、箒で殴られた。

「言うな!これでも気にしてんの!ってか、もともとオレらの世界では年齢の進み方が、遅いんだよ!」

その中でも、かなり遅い方らしい。・・・背の伸びも。


「で。オレさまは、見事『第1級国家認定魔法使い』まで上り詰めて、この世界に来てる・・わけ。任務でね」


 

オズたちの世界では、『悪魔』と呼ばれるものが多く存在しているらしい。
魔力を持ち、人の魂を喰らって生きる。
国家認定魔法使いの主な仕事は、その悪魔を捕まえ、封印すること。



「1週間前・・封印されていた悪魔3匹が、手違いで逃げ出してしまったんだよ」

かなりの高位の悪魔たちで、オレたちの世界に運良く逃げ出してしまった、とのこと。
そこで、オズに特別な任務が下された。「その悪魔を捕まえ、再び封印せよ」



「いやー2日前にこっちの世界に来たんだけど、初めてだからさっぱり分かんなくて。いろいろさ迷ってたんだけど、お腹も空いて、そんな時に悪魔が現れてさぁ」

オズは頭をかきながら、けらけらと笑う。

「ほんと、お前に会えて良かったよ。そうじゃなかったら、飢え死にしてた」
「全く・・・」

何で、自分は死にそうだったのに、こんなにあっけらかんとしているのだろう。
こいつは、自分のことを大事にしないタイプなのかもしれない。なら、オレがしっかり守ってやらないと!


「あと2匹は?」
「んー。気配が分からないんだよね。この世界は、ものが多すぎるから」
「・・なら・・・しばらく、ここで暮らすか?」


小さい声でごにょごにょと言ったから、オズは聞き取れなかったらしく、もう1度言ったら、オズは目を丸くさせた。



「いいの?」
「ああ」
「でも・・オレはこの世界の人間じゃないし・・迷惑かけちゃうかも・・・」
「いいんだ。オレが、その・・お前と一緒に居たいから・・だから・・っ」


やばい恥ずかしい。顔が真っ赤な自信がありありなんだが。
おそるおそるオズの方を見ると、オズも・・心なしか耳が赤いような気がする。



「そっ・・それならっ!」




一緒にいてやる。その強気な言葉に、オレはたまらず吹き出してしまった。
















 

  
 この話の中では、オズは超ツンデレでいきます(笑




 


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