《1.魔法使い登場!》 
























オレ、ギルバート・ナイトレイは非科学的なことは信じないタイプだ。
幽霊?お化け?雪男?吸血鬼?魔法?天使?悪魔?そんなものこの世に存在するわけない。存在してたまるか。そう思っていたのに。

なのに、なぜ、オレの目の前で、魔法使いの少年と悪魔が戦っているのだろう。

オレは今一度ごしごしと目をこすってみた。
うん、見間違いじゃない。
頬をつねってみる。
うん、夢じゃない。






なぜこんなことが起こってるんだろう・・・
今日、何かあったっけ。
朝いつも通りに起きて、職場である近くの高校へ向かって。いつも通りに国語を教えて。
そして、いつも通り、少しだけ残って授業の用意をして、家に帰宅する・・予定だった。
近道である公園を通り抜けながら、ああ、今日の夕飯は何にしようかなぁ・・とぼんやりと考えていた時だった。目の前のブランコに何かがぶつかり、ブランコが跡形もなく壊れたのは。



「は・・・?」



しばらく開いた口がふさがらなかったオレ。というか、いきなりすぎてついてけなかったんだと思う。
土煙が舞い、それが収まると、そこに人影が見えた。
どうやら、そのブランコにぶつかったのは、その人物らしい・・いや待て。何で動いてるんだ?ぶつかったブランコはもうぐしゃぐしゃなんだが!


その人物は、むくりと起き上がると、顔についた汚れを腕でこすった。

「ちっ。くそ、すばしっこいなあいつ」


あ、しゃべった・・ということよりも、オレは別のことに驚いた。
まずは、その人物があまりに可愛いかったことに。輝く金髪に、エメラルドグリーンの瞳。小柄で、最初はその人形のような整いすぎな容姿に女の子かと思ったが・・声からして男の子・・しかも、まだ少年らしい。
次に、その異様な格好に。頭に真っ黒のとんがり帽子。それと合わせたかのような黒いローブ。下は緑色のチェックの半ズボン。さらに、右手には30センチほどの細い杖のようなものを握っていて、左手には長い箒。
まるで・・・魔法使いのような風貌の少年。いや、魔法使いなんているわけがない!ただのコスプレ・・・・にしては恐ろしく似合ってるな。可愛い。いや!違くて!


少年は立ち上がり、埃をぱんぱんとはたくと、きっと空を睨んだ。


少年が向いた方を向くと・・そこには・・・悪魔?

全身黒い服を着ており、そこまでは普通の人間と似ているのだが。耳はとがっているし、牙が生えているし、極めつけには背中からは黒い羽が生えている。さらに言うと、宙に浮かんでいる。

どうやら顔立ちから男のようだが・・・その悪魔?のような男はにやりと笑い、叫ぶ。

「はっ!どうした魔法使い!オレを捕まえにきたんじゃねぇのか!」
「うるせぇ!てめぇ、ちょこまか動くな!面倒くさいんだよ!」






少年は持っていた箒にまたがり、地を軽くけると、ふわぁと宙に浮かんだ。そして、すぐさま速度を上げ、男がいる所までのぼる。





「水よ!」


少年が言い、杖を振るう。すると、少年の足元付近に何やら文字がたくさん書かれている陣が、浮かび上がり、そこから大量の水がものすごい勢いで男に向かう。


男は、両手をかざし、必死にそれを受け止めようとするが、勢いに押されている。

「くそっ」
「風よ!我が名において、命じる!あの男を捕らえろっ!」

少年がもう1度そう唱えると、再び陣が浮かび上がり、強風が吹き荒れる。
オレも両腕で顔を覆い、耐える。
そろそろと目を開けると、風が、びゅんびゅんと男の周りを囲っていおり、男はそこから出られないようだった。
男はもがくが、その戒めの風はびくともしない。
少年は、一息をつくと、そっと杖を振るう。




「我が名において、お前を封印する」





凛とした声でそう囁くと、杖から放たれた光が男に巻きつき・・・・次の瞬間には男はそこにはおらず、ただの黒くて丸い石?のようなものとなっていた。



少年がさらに杖を振ると、風が収まり、支えを失った石が地面へと落下し・・・オレの足元に落ちた。

「これは・・・」


オレはしゃがみこみ、その石に触れた。どくんどくんと、まるで心臓のように鼓動が伝わってくる。まるで、生きているかのように。


オレがそれに見入っている間に、その少年が、地面に降り立った。


「さてと・・・」


少年がオレの方をきっと見つめる。
そのまっすぐな瞳に射抜かれ、オレの心臓が激しく波打った。その視線に囚われ、動けなくなる。
近くで見たら、ますます人形のようだ。綺麗すぎる。目が離せないほどに。


「あんた、誰?ずっと見てたでしょ」
「あ・・ああ」
「この世界の人?なら悪いけど、記憶を消させてもらうから・・・・ん?」



少年はオレにおもむろに近づき、その小さな手をオレの頬に当てる。
やばい。かなりの至近距離だ。ってかますます綺麗なんだが・・すげぇ可愛い・・・
って!オレは何を考えてるんだ!相手は男だし、変な魔法使い?(まだ認めていない)なんだぞオレ!いや、でも・・綺麗だ・・・。
そんなことを考えている間も、少年はオレの瞳をじっと見つめてくる。


「あんた本当にこの世界の人間?」
「は?まぁ・・な」
「これは珍しい。微量だけど魔力がある」
「魔力・・?」
「ん。時々いるらしいんだけど、オレが見たのは初めて。っていうか、少しでも魔力がなきゃ、その石には触れないから」


少年はオレの手からその石を受け取り、大事そうに懐にしまう。
少年が説明するには、その石は、さっきの男・・・悪魔を封印したもの・・・だとか。


「君は・・いったい・・・?」


オレがそう言いかけると、ぐううっと大きな音がした。
少年がお腹をばっと押さえる。その顔は真っ赤になっていて、ものすごく可愛い。


「えっと・・・・腹減ってるのか・・?」
「・・・・・」
「オレの家にでも来るか?夕飯でも・・・・」


なんでだろう。ここでこの少年を放っといてはいけない気がした。
それは初めての感覚だった。
こんなにも、もっと一緒に居たいと思うのは。




少年はしばらくオレの顔を見つめ、

「じゃ、そうする」


その言葉にほっとしながら、オレの家へと案内しようとした時、少年は「あ」と声をあげた。


「どうした?忘れ物か?」
「ううん。オレったら忘れてた。魔法使いたるもの、ご飯をご馳走してくれる恩人に、挨拶すらしていないもん」


少年は、自らの胸に手を置き、にこりと微笑む。
















「オレの名は、オズ・べザリウス。ここではない世界から来た、魔法使いだよ」
























 使

 
 1度はやってみたかった魔法使い話・・・!
 オズといったら『オズの魔法使い』を連想してしまう・・!!
 

 
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