《舞い落ちる一片を掴みとる奇跡》














「うわぁ!綺麗な桜!」


パンドラからの帰り道。本来なら、徒歩でなく馬車で帰るものなのだが、「せっかくのいい天気だし」というオズの提案で、だ。ギルはオズが決めたことだから、もちろん異論はない。
 
そこで見つけたのは、道の両端に、ずらーっと並ぶ桜の木。
頭上にも桜の枝が広がっており、桜が目の前を華麗に落ちていく。





「見事だな」
「でしょう?ギル!歩いて帰って正解だったろ?」



えへん、と胸を張るオズ。
その可愛らしい様子にギルは金の瞳を細め、「そうだな」と呟く。




「知ってるか?オズ?」
「ん?」
「桜ってのはな、地面に埋めてある人の死体の血を吸ってる、と言われてるんだぞ」
「ちょっと、ギル!怖くなるでしょ!」



怪談などに弱いオズは、眉をひそめながらギルの服の袖を掴む。
悪い、悪い、とギルは謝り、また、静かに桜を2人で見つめる。



「だからかな」
「?」
「だから、こんなに桜は綺麗なのかな」
「言っとくけど、オズ。さっきのは本当のことじゃないからな?」
「分かってるよ!でもさ、桜って生き生きしてるじゃない?」




そんな2人の前を、無数の花びらが舞う。



「踊ってるみたい」
「こいつらは・・これから散っていく運命なのに?」
「そうだね。でも、どうせ散るなら、楽しく散りたいと思う」
「そうだな」
「ねぇ、ギル!桜の花びらを5つ、落ちている時に掴んだら、夢が叶うんだって」




そう言うやいなや、オズがギルの袖から手を離し、駆け出す。
大きく手を伸ばし、花びらを掴もうとするが、花びらはなかなかすばしっこく、掴めきれていないようだ。



「むー!ギル!手伝って!」
「オレが手伝って、夢は叶うのか?」
「つーっ!いいもん!自分で頑張るからっ!」




待てーっと、オズは花びらを追いかけてギルから遠ざかっていく。
そんなに走って意味があるのか?とギルは苦笑しながら首をかしげ、己の目の前を通り過ぎていく花びらたちに手を伸ばす。


すると、偶然、ちょうどその手のひらの上に花びらが舞い降りた。





「奇跡だな」








思えば、自分は運がいい。
記憶を失ったオレは、べザリウス家に拾われ・・・・
そして、オズと出会った。


どれくらいの確率なのだろう。




オズと出会える確率は。


それは、この花びらを、こんなにたくさんの花びらから掴み取った確率と等しいかもしれない。








「オズは、確か、5枚と言ったな」


あと、4枚。


ギルは帽子を押さえながら、桜吹雪の中に向かって駆けていった。




















あれ・・短い・・・(笑
というか・・季節が・・まぁ、いっか←いいの?
少しだけ雰囲気を変えてみたんですが…うん撃沈だww

お題は『kara no kiss』さまより







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