《君には格別あまいのを》


















「ねぇ、ギルぅ?」
「何だ?」
「お菓子作って!」

と、首をかわいらしく傾け、恋人から頼みごとされたら、オレには断るすべはない。というか、むしろ歓迎。
顔がおそらく情けないくらいだらしないだろうが、仕方がない。


「いいぞ?何が食べたい?」
「んーっとねぇ、ケーキも食べたいし、プリンもいいなぁ。あ、でも、シュークリームも好きだし、ドーナッツも食べたい!」
「えっと・・・全部か・・?」


さすがに多い気が・・・
オズも、腕を組み、うーんと悩んでいる。


「ケーキも食べたい・・でもプリンも捨てがたいよね。あーっ、でもシュークリームもなぁ・・・」


必死に悩むオズ。か・・かわいい・・・・!!
思わず抱きしめて、頬ずりして、あの柔らかな金髪をなでなでしてやりたい衝動に駆られる。
いかんいかん。平常心、平常心。




「ねぇ・・ギル?」
「うん?」
「全部・・・は、だめ?」


エメラルドグリーンが若干潤んでいて、プラス上目遣い。
人は言う。オズのこの笑顔を『計算しつくされた子悪魔の笑み』だと。
それは確かによく分かる。全部作るなんて大変だ。オレには今日しなくてはいけないパンドラの仕事が山のように、いやまじで冗談じゃなく!あるのだ。
言うんだ!オレ!年長者として、恋人として、オズに我慢というものを教えてやるんだ!



「あーいいぞ」



しかし、オレから出た言葉はこんな言葉。
こんな可愛いオズを悲しませるなんてできるかあああぁ


「ほんと?!」

オズがぱあっと顔をほころばせ、オレに抱きついてきた。
ふわっと、オズの甘い香りがする。


「ありがとっ!ギル!大好きっ!」



なんてこと言われたらがんばるしかないじゃないか。
はぁ・・・今日は徹夜で仕事決定だな・・・・




















「いただきまーす!!」

1時間後、オレは手早くオズのためにお菓子を作り、オズの前のテーブルへと置くやいなや、オズはそれらを頬ばり始めた。


「おいしいっ!オレ、ギルのお菓子大好きなんだよねぇ」
「そうか。嬉しいな」


オレはエプロンを外し、オズの目の前の椅子に腰を下ろす。
オズはあきれるぐらいのスピードでお菓子を食べていく。
口の周りにチョコがついているのに気づいて、オレはそれを指ですくい、自分の口に運ぶ。
うん、なかなかおいしくできてるな。

そんなことを考えていると、オズの動きがぴたっと固まっていることに気づいた。
オズ?と声をかけると、


「ギルってさぁ、無意識でそーいうことしちゃうよねっ」
「そーいうこと?」
「べ・・別にいいけどねっ!」


なぜかオズの顔は赤らんでいて。さっぱり分からないオレだが、オズは再び食べるのを開始し出したので、まぁいいか、と思っていると・・・





「む!!おっオズ!それは何だ!!」
「あ、アリス。これはね、ギルが作ってくれたんだよー」
「なっなに!」





ちっ。心の中で舌打ちをする。
オレとオズを邪魔しにきたのかバカウサギ・・!!





「おーや?なにやらいい匂いですネェ」

さらにブレイクがタンスの引き出しから・・・引き出し?!


「お前は、ふつうに登場できんのか!」
「おやおやお菓子ですか。どうりで私を呼んでると思いましたヨ」
お呼びでないから。
「まぁ、ギルバートくんはへたれのくせに、料理は得意ですもんねェ」
う・・うるさい!
「では、私も少しいただくとしましょう」




ブレイクとバカウサギがお菓子に手を伸ばそうとする。
オレはそれをむんずと掴み、



「分かった分かった!お前らの分も作るから!だから、そこのお菓子は食べるなよ!」
「えー?ちょっと多いから、ブレイクとアリスにあげても・・」
「だめだ!今作るから待ってろ!」



きょとんとしたオズ。バカウサギは別に食べれればどうでもいいのか、満足したような笑みを浮かべている。
一方ブレイクは、オレの意図を察したようで、不気味な笑みを浮かべてやがる。


オレは、再びエプロンを取り、厨房に向かう。
今日は、徹夜どころじゃないぞ・・・そう思い、ため息をひとつ。


















ブレイクとアリスの扱いひでぇwwww
ギルは、オズ用には特別に愛をこめているからだと思います。
お題は『アリガトウを言葉に』さまより







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