3 | ナノ



暗かった外がいつの間にか明るくなっているような時間帯に、目を覚ました。
隣で眠っている黄瀬はまだ起きていないようで、まあそりゃあそうかと思う。昨夜は自分でもヤりすぎたという自覚がある。今日黄瀬の機嫌が悪いだろうことも、簡単に予想できる。

隣で眠っている黄瀬には、ピアスがついていない。そういえば昨日流れで外させたが、黄瀬から奪った後、どこに置いたんだっけ。そう思い安物の組み立て式ベッドから降りると、ぎし、と音が鳴った。
取り敢えず下を履いてから、昨日押し倒した床辺りを捜索する。すると、テーブルの下に留め具と本体が転がっていて、少し安心した。失くしたと言ってふざけんなと怒鳴られるのは御免だ。
それを拾って、改めて眺める。深くて燃えるような赤。黄瀬はやはりどんなアクセサリーをつけても様になっている。だから、この色のピアスでも十分に似合っていた。けれど。

オレは、黙ってそのピアスをジーンズのポケットに入れた。
起きた黄瀬はピアスが無いと言い出すだろうから、テレビの横に置いた白い小さな箱を持って、眠っている黄瀬の所へと戻った。まだすやすやと眠っているのを見て、箱を開ける。濃紺の中に輝く青色の一つを取って、そっと黄瀬の耳に通した。



その後、残った一つのピアスを同じようにポケットに突っこんで、冷蔵庫を開ける。そこには昨日と変わらず白い箱が置かれていて、少し空しい気持ちになった。誕生日の夜を結局セックスで終わらせてしまったのは自分のせいだけれど、誕生日ケーキを次の日に食べるとなると、何とも言えない気持ちになる。箱を開けると、砂糖菓子かチョコのプレートに大輝くんお誕生日おめでとうなんて書いてあるのだろうから、虚しさも倍増だ。ガキと呼べる歳でもないのに、黄瀬はいつもこういうことをしてくる奴だった。

そんなことを考えていると、布団がもぞもぞと動く音がする。
今日一日は多分機嫌が悪いだろうけれど、その耳に輝く新しいピアスでどうにか勘弁してほしい。これでもバイトの給料を相当貯めた結果だ。


「はよ、黄瀬」
「……」

こいつはまた、面倒臭い怒り方をしている。というより拗ね方か。
布団にくるまり背中を向けた黄瀬は、挨拶にも応じてくれなかった。はーと溜息を吐いて頭をがしがしと掻いてから、ベッドのそばに座り込む。


黄瀬が自ら飛び跳ね、自らの左耳に煌めく新しい色に気付くのは、それから数秒後のこと。


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青峰くんお誕生日おめでとう!と、黄瀬くんピアス記念です。お幸せに。
2013.08.30/31


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