こちょこちょ


「ざけんなよ、仁王。ちげーって言ってんじゃん」

部室に響く丸井の声に、ジャッカルは頭を抱えたくなった。
事の発端は些細な出来事。
三強と紳士の欠けた部室で、何を思ったのか、丸井はジャッカルの脇腹をくすぐり始めた。
笑いながら「うわ、やめろ」と抵抗する姿を求めたのかもしれないが、生憎、ジャッカルの反応は淡々としていた。
最初こそ驚きの声を上げたものの、その後は平然と丸井の為すがまま。
腹に力を入れれば簡単にやり過ごせる愛らしい攻撃を受け流すジャッカルに、丸井は少し拗ねたような顔をして呟いた。

「ジャッカル、不感症?」

それを耳にした仁王が、どう曲解したのか――十中八九わざとだと思われるが――聞こえた単語で茶化し始めた。

「ジャッカルはインポだったんか」
「はぁ!?」
「欲求不満なら俺が相手しちゃるぜよ、丸井」

にやにやと下世話なネタへと走る仁王を、ただの戯言、軽口とやり過ごせば良いものを、丸井は真剣に応戦した。

「おまえに相手なんかしてもらわなくても欲求不満になんてなんねーよ」

ジャッカルをなめんな、と本人にとっては不穏当な方向へと話が流れ始める。
仲間内とはいえ、あまり夜の事情は探られたくないし、知られたくない。
そんなジャッカルの思惑に気付かない丸井は、煽られるままに声を上げる。
ブン太、いいから、とジャッカルが宥めようとしても、そうはいかないとばかりに聞く耳を持たない。

「たとえジャッカルがインポだったとしても、俺はジャッカルが好きなんだから浮気なんてしねーんだよ、バカ!」
「やっぱりイン…」
「“たとえ”っつってんだろ!! ジャッカルのはガッツリ馬並みに勃つんだよ!」
「……ブン太」

熱く語る丸井に、ジャッカルはしょうがないとばかりに溜息を吐き、仁王は珍しく大爆笑した。
まだまだ陽の高いうちから大声で語られたイカガワシイ話は、部室の外にいても聞こえていたようで、笑顔で現れた部長に三人まとめてトレーニングを増やされるのは、数分後のこと。





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雑多な365題:12

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