鍛錬を中断し、綾は木陰に座り込んだ。
見上げた空は真っ青で、真っ白な雲がよく映えている。
滴り落ちる汗も、目前に迫る夏を実感させる。

「はー、暑い!」

思わず口から出てしまう程に、気温も上がっていた。
そろそろ鍛錬もつらくなってくる季節だ。
だけど綾は、決して夏は嫌いではない。

「綾、休憩か?」

木の上から突然降ってきた、声と人影。
軽く汗を拭うと、綾の横に腰を下ろした。

「委員会は終わったの、ハチ?」

「おー、ようやく全部捕まえた!」

太陽のような笑顔。
八左ヱ門には夏が似合うなあ、綾はそんなことを思う。

「今日は結構暑いなあ。」

「うん、もう夏って感じだね。」

木に体を預けると、緩やかな風が熱をやさしく奪っていく。
青葉の揺れる音が耳に清爽感を与えてくれる。
全身で涼を感じていると、不意に、二人の手が触れた。

「あっごめ…ん?」

そのまま握りしめられる、綾の手。
不思議に思った綾が八左ヱ門の方を見ると、少し顔を赤らめながら笑っている。

「さっきさ、あっちできり丸がアイスキャンデー売ってるの見たんだ。
 買いに行こうぜ!」

校庭の方を指さしながら、八左ヱ門は立ち上がる…手をつないだままで。
綾を引き起こし、二人で並んで歩く。
次第に汗ばんでいく手に、綾は八左ヱ門を見上げる。

「ハチ、手、暑くない?」

「繋ぎたいから、いいんだ。」

八左ヱ門が嬉しそうに目を細める。
そこに感じられる誠意に、綾の顔がほころんだ。

「アイスキャンデー、ハチのおごりね。」

「…おう。」

青い空に白い雲、隣には太陽のような笑顔。
今の季節が一番好きだ、二人、思うことは同じ。
始まる夏に心昂り、どちらからともなく、つないだ手に力を込めた。




手をつないで
暑くたってかまわない!



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