初めまして。わたしは、ななみはるか、と言います。
“漢字”という文字で書くと、七つの海に春が歌うという意味だそうです。漢字はよく分からないけど、わたしはこの名前が大好きです。
年は今年で5才になります。シャイニング保育園という保育園に通っています。
シャイニング保育園にはお友達と優しい先生がたくさんいます。
朝、わたしが保育園に来ると、
「はるかちゃん、おはよう!」
いつも一番に笑顔であいさつをしてくれるお友達がいます。おとやくんです。
「おとやくんおはようございます!」
わたしもおとやくんに笑顔であいさつをします。
「はるかちゃん早く一緒に遊ぼうよ!」
おとやくんはいつも元気でわたしを遊びに誘ってくれます。
わたしは急いで教室に行ってお遊戯服に着替えておとやくんや他のみんなと朝の会までいっぱい遊びます。
最近はかくれんぼがみんなのお気に入りです。
保育園の中をたんけんしているみたいでとても楽しいです。
でも、ときどき危ないところに行ってしまって先生に怒られてしまいます。
「はーい、みんな教室に入ってー」
先生がみんなに声をかけると朝の会が始まる合図です。
かくれんぼをしているとすぐに時間が経ってしまいます。
朝の会が終わるとみんなで先生のピアノに合わせて歌ったり、絵をかいたりします。
わたしは大きな声で歌を歌うのがすこし恥ずかしいです。
もし、大きな声で歌って変な声がでてしまったらと考えると大きな声で歌えません。
今日も歌の時間が始まってしまいます。わたしは少し“ゆううつ”になりました。
「それでは今日は四人のお友達で班になってみんなに発表しましょう。みんな好きなお友達と班になってください。」
先生に言われてみんながお友達と班になっていきます。
「はるかちゃん!一緒の班になろう!」
おとやくんがいつものようにわたしを誘ってくれます。
「みんな班になりましたね。それじゃあ、少しのあいだ班のお友達と練習してください。」
練習の時間、わたしはいつものように小さな声で歌います。
ふと、おとやくんを見てみるととても楽しそうに歌っていました。
おとやくんの声はみんなを元気にしてくれるような声でした。
「それでは、練習を終わってみんな班ごとに集まってください。」
みんなが先生の周りに集まります。
「それでは順番に発表していきましょう。」
そうして、発表が始まりました。
「はるかちゃん、はるかちゃんは歌うの、きらい?」
発表の途中、突然おとやくんがわたしの顔をのぞき込みながらそう言いました。
「どうして?」
わたしはおとやくんに聞き返しました。
「だって、はるかちゃん、楽しくなさそう。」
「じゃあ、おとやくんは歌うの好きなの?」
すると、おとやくんは笑顔で答えました。
「歌ってるとたのしい気持ちになるから、おれは歌うの大好き!」
それを聞いてわたしもこんな風に言えたらいいな、と思いました。
「わたしは…恥ずかしいんです。」
「恥ずかしいって?」
おとやくんは不思議そうな顔をしました。
「もし、変な声が出ちゃったらどうしようって考えてしまって…」
「…」
「そしたらみんなに笑われちゃう。それが怖いんです。」
わたしは少し悲しくなってしまいました。
「はるかちゃん。」
それまで黙っていたおとやくんが言います。
「おれと手をつないで歌おうよ。」
いつもみたいに。遊びに誘ってくれるときみたいに。
「じゃあ、次はおとやくんの班が発表します。」
「行こ!はるかちゃん!」
おとやくんがわたしの手を引っ張っていきます。
みんなの前に立って。先生のピアノの音が始まります。
わたしはおとやくんを見ます。おとやくんはわたしに笑いかけます。
すると、どうしてかとても楽しい気持ちになりました。
つないだおやくんの手はとても暖かいです。
となりでは、おとやくんのあのみんなを元気にしてくれる声が聞こえます。
気が付くとわたしはとても大きな声で歌っていました。
とても、とても楽しい気持ちでわたしは一生懸命歌いました。
曲が終わります。
おとやくんもとても楽しそうな顔をしていました。
「ね、歌うの、楽しいでしょ?」
わたしは大きな声で返事をします。
「はい!」
そしておとやくんに笑いかけました。