「はーるっかちゃん!」


うしろから名前を呼ばれて春歌が振り返ると、


「ばあ!」「ひゃぁっ!!」


そこにはおばけの仮装をした音也がいた。


「もしかして・・・おとやくん、ですか?」


「せいかい!」


目の部分だけ切り取られたシーツの下から音也が顔を出す。


「びっくりしたぁ。」


そう言う春歌は黒いワンピースに、先が尖った帽子をかぶり星のついたステッキを持っている。


「えへへ、ごめんなさい。もしかしてはるかちゃんは魔女?」


「はいっ!」


くるっと回ってスカートを翻し春歌は楽しそうだ。


「はるちゃんかわいいです!」


那月が笑顔で春歌に言った。


「なつきくんは犬ですか?」


たれ耳やしっぽが付いた着ぐるみを着ている那月に春歌が問う。


「はい!まさと先生に作ってもらいました!」


「すごーい!!まさと先生なんでもつくれるんだぁ!!」


「おれにはこれを作ってくれたんだぜ!」


真斗の器用さに感心している音也に翔が言う。


「しょうのは・・なに?」


「なん・・でしょう?」


「しょうちゃんかわいいです!」


「かわいいじゃなくてかっこいい、だろ!これはな、ケンカのおうじさまの衣装なんだぜ。」


翔が得意そうに言う。


「へー、すごいかっこいい!!」


「しょうくんすごくかっこいいです!」


「はい!しょうちゃん、とーってもかわいいです!」


「結局かわいいのかよ・・・」


翔はげんなりとした。


「ぼくだって負けないよー!」


「あっ、れいちゃん!」


そこにやってきたのはドラキュラの恰好をした嶺二だ。


「わー、れいじくんもかっこいいです!」


「本当ですね!れいじくんもかわいいです!」


「もしかして誰でもかわいいのか・・・?」


翔が今度は呆れた顔をした。


「でしょでしょー!?まさと先生が作ってくれたんだ!」


「ワタシだって負けていまセン!」


そこへセシルがやってきた。


「セシルくんはなんの恰好ですか?」


「まさとにさむらいの服を着たいと言ったらこれを作ってくれマシタ。しんせんぐみの服だそうデス。」


「じゃあ、ドラキュラとさむらいどっちが強いか勝負しようよ!」


「いいでショウ!負けませんヨ!」


嶺二の声にセシルが腰に差してあるおもちゃの刀を抜きながら答える。


「じゃあおれも混ぜて混ぜてー!!」


「おぉっ、おとやんもぼくとやる気かな?」


嶺二はマントをひるがえした。


そしてセシルが嶺二に切りかかろうとしたとき、


「こんなのロックじゃねぇ!」


「そう文句を言うな。よく似合っているぞ。」


嫌そうな顔をしている蘭丸を真斗が連れてきた。


「らんらん、それってもしかしてかぼちゃ?」


「あぁ、そうだ。これが一番作るのに時間がかかってな。おれの自信作だ。」


真斗が誇らしげに言う。


「すごーい!!まさと先生は本当になんでも作れちゃうんですね!らんまるくんも似合ってます!」


「はい!らんまるくん、かわいいです!」


「・・・・はぁ。」


春歌と那月のとなりで翔はちいさく溜息をついた。


「皆衣装に着替えられたか?」


「はーーい!!」


園児の返事に真斗はどこか満足げだ。


「それじゃあ、各自先生の所に行って菓子を貰うといい。」


真斗がそう言うやいなや園児たちは各々お菓子をもらいに散らばっていった。




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