▼ 幸せになりたいおそ松
ちゅっと音を立ててキスされた。私が顔を見るより早くサッとその場から退いて、顔を覆って背中を向ける。見える耳は真っ赤になっていて、見たことの無い様子に驚いて数回瞬きを繰り返した。
「…なまえ」
「うん」
「今こっち来ないで」
こっちに来るなとは。なんて酷いことを言うんだろうか、この男は。
おそ松の言うことを無視してのそのそと近付いていく。きっと服と床が擦れる音とかで気付いてるだろうけど何もアクションを起こさないおそ松は、きっとそんなのが出来ないぐらいに動揺しているんだろう。
「おそ松、」
「ちょっ、と待て。後でちゃんと構ったげるから。だから今はほっといて、お願い」
「……」
お願いまでされてしまうとは。だが聞けぬ。私はおそ松の言うことを聞かない悪い子なんだ。
おそ松のパーカーを二、三度引っ張っても微動だにしなかったので顔を覆うおそ松の前に座る。そうっと気付かれないように手を伸ばしておそ松の両腕を掴む。そこから先は早かった。
大して力の入ってなかったおそ松の腕はあっさりと外れて、驚きに後退るおそ松を抑えてそっと唇を重ねた。二秒。途端に力を取り戻したおそ松の腕が私の両腕を捉えて床へと縫い付ける。
「あー、もうなまえの馬鹿。ほっといてって言ったじゃん」
「……おそ松が、」
「うん?」
「せっかく二人だけだっていうのにほっといてとか言うから」
「……うん、ごめん。好き」
不貞腐れた声でそう言えば、おそ松は顔を赤くして照れたような笑顔を見せた。うん、可愛い。私の彼氏は最高に可愛いんだ。
すりすりと頬を滑る筋張った手のひらに撫でられて、甘えるように擦り寄れば額にキスをもらって思わずニヤけてしまう。おそ松は甘やかし上手だ。
「あの、なまえ」
「うん」
「その、えっと、したいです」
「うん」
ふにゃりと安心したように笑うおそ松に釣られて笑う。そろりと震えたキスが落とされて、二度三度と繰り返す。それだけで満たされたような気分になるから私はちょろいと思う。
「うわ、やらかっ」
「い、わなくていいからっ」
服を脱いだだけでも恥ずかしいのに、手のひらに胸が包まれるのがわかって顔が赤くなる。ふにふにと優しく揉まれて、それでもおそ松の手が震えているから緊張しているのがよく分かった。室内は暗くしたものの僅かな光を逃さずじぃっと私の顔を見てくるおそ松。恥ずかしくなってキスをすればぎゅっと強く掴まれて声が上がる。
「わ、え、ごめん!」
「ん、んん、平気…ビックリしただけ」
「なまえ、不意打ち駄目。ほんと俺、今余裕ないから」
「…へへ、私余裕ない時のおそ松、結構好き」
「……もう、馬鹿!」
太股あたりに擦りつけられたおそ松のそれに恥ずかしくなった。期待と不安がごちゃ混ぜになったそれは、きっと初めてだろうおそ松も一緒だから少し気持ちが楽になる。
すりすりと普段人に晒さない部分に指先が擦り付けられて声が漏れる。落ち着かせるようにかキスを落としてくるおそ松の優しさを感じながらも、怖さは消えない。つぷりと音がした気がする。異物が入ってきた感覚に短い悲鳴が漏れて、ぎゅっとおそ松にしがみつく。
「なまえ、大丈夫。息して、ゆっくりでいいから」
「ん、はっ、うぅ、……何かおかしいっ」
「うん、大丈夫。慣れてないだけだから、俺もこんな小さいところに入るとか無理だろって思ってる」
「な、にそれ…、ふふっ」
キスを何度もしながら、やがておそ松がゆっくりと膣内を擦るようにピストン運動を開始した。始めこそ痛みがあったものの、繰り返すごとにだんだんと息が上がってきて頭の中が熱に浮かされた感覚に陥る。
「はっ、ふ、……んんっ、おそ松っ…、あぅ」
「……エロ。なまえ凄い、エロい」
「ひぁっ、や、だやだっ、なんかおかしっ!こわ、あ、やめ」
「あ、イキそう?イッていいよ。なまえのイキ顔見たい」
何かが込み上げてきた瞬間に目の前がチカチカと光って、それと同時に耐えきれない声が漏れる。背中が仰け反ってビクビクと足とお腹が震える。ずるりと指を引き抜かれてそれに対しても声が漏れてしまって、顔を覆って隠せばクスクスと笑ったおそ松に優しく手を退かされた。
「可愛いなまえ。休ませたいけど、ごめん。俺も限界きてる」
「は、ふぅ…、ん、大丈夫。おそ松と一緒がいい」
「…もうホント、なまえ離してやれないわ。ごめんなクズで。あと俺に処女くれてありが、んっ」
「……恥ずかしいからもういい」
緊張してるのか口数が多い上に早口だ。サッと手のひらで覆って笑えば、そっとその手を握られる。ぬるりとしたものがそこに当たって声が出た。おそ松もぐっと下唇を噛んで耐えるようにぐっと腰を進めてきて、さっきとは全然違った激痛に声を押し殺す。握る手に力が入って、はっはっと息を荒らげたおそ松が眉を顰めながらもキスをしてくれる。
「ん、ああっ、いっ、た…!ひ、ううう…っ!」
「ごめ、ん、なまえ、あと、ちょっとだからっ」
「はっ、も、やだぁっ」
首筋に吸い付いてきたおそ松にピリピリとそこが痺れて少しだけ気が紛れた。
痛みに耐えていれば、すりすりと空いた手で頬を撫でられる。閉じていた目を開けるとそこにはへにゃへにゃと緩みきった笑顔で私を見下ろすおそ松がいて「入った」と一言息と共に吐き出した。
「ほ、んと?」
「うん。なまえと今繋がってる」
「そっ、かぁ…」
「平気?動いても大丈夫?」
「ん、おそ松の、好きにしてください…っ、」
膣内に入っているだろうそれがドクリと動けば反応してしまう。私の言葉におそ松は優しく頭を撫でて、そうしてちゅっとキスをしてきた。きっとそれがおそ松なりの合図だったんだろう。
ゆるゆると膣内を擦るそれに声を漏らす。次第に動きは早くなって、おそ松の背中に回した手に力が入って思わず爪を立ててしまう。
本当に、気持ちよかった。はしたないと思うからもしれないけど、息を荒らげながら時々キスをしてくるおそ松が心底愛おしくて、本当にどうしようもないくらいに気持ちよかった。
「んっ、なまえっ、すっげぇ、気持ちぃっ」
「ひぁっ、ん、ふぁっ、あ、おそま、おそ松っ」
「ふ、ハハ…、なまえ、ごめ、イキそうっ」
「わた、しも……っ」
ぐっと腰が押し進められた瞬間に感じたこともないような快感に声が抑えられなくて、思わず覆い隠そうとした手はおそ松が素早く伸ばした手に遮られた。
肩で息をするように荒い呼吸を落ち着かせようと酸素を取り込む。ぼふっと倒れ込んでくるおそ松は息を整えてニヒヒといつものように笑った。
「なまえ、声可愛いかったぁ」
「……馬鹿」
「んー、へへ。今何言われても幸せだわ」
「……うん」
言葉のとおり幸せそうに笑って頭を撫でてくれるおそ松に、今日何度目かわからないキスをした。幸せなのはこっちだって同じなのだ。
剋O万hit記念