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▼ 騎士王の娘は幸福を得る

「白野様っ」


軽やかな足取りで白野(男)に駆け寄る純白のシフォンドレスを揺らす少女は、その端正な顔に花が咲いたような笑顔を浮かべて手を伸ばす。白野も満更じゃなさそうな顔で、応えるようにその手を取って薄く笑った。我が半身ながら羨ましい。たとえ私が女でも、あんなに綺麗な女の子に喜々として呼ばれれば喜々として応えるに違いない。だろう、アーチャー?


「素直に嫉妬を口に出来て偉いぞマスター」

「白野が憎い…」

「恨み言はやめたまえ」

「アーチャーはどうなんだ?」

「言っただろうマスター。可愛い子なら誰でも好きだと」

「ドンファン死すべし慈悲はないっ!」

「なんでさっ!?」


素晴らしい笑顔で言ってのけたアーチャーの背中目掛けて、足から突撃した玉藻に思わず賞賛の拍手が出てしまった。ナイスだ玉藻。地に伏せるアーチャーと代わるように、華麗に着地を決めた玉藻がきゅるんとした笑顔でこちらを見て、頭を撫でてやればそれはもう蕩けたような顔をする。おおう、君も十分可愛らしい。


「はぁん!ご主人様を盗られてしまって傷心中の私のパワーゲージがみるみる内に癒されていますぅ!」

「盗ら…、いや別になまえは白野を盗ったわけでは…」

「ややっ!まさかマスターまで彼の騎士王(娘)に目を奪われているのではっ!?」

「可愛くてあの一途感はいじらしいと思う」

「ガビーン」


しくしくと泣き真似をしている玉藻の頭を撫でつつ白野を見遣れば、なまえと会話に花を咲かせているらしかった。本当に幸せそうに笑うなぁ、白野も、なまえも。
こんな所で死にたくないと手を伸ばした白野の手を取ったなまえを見た時、今にも泣きそうな子供のような雰囲気を出していた。


「突き付けられた死への事象を拒み、それでも尚生を選ぶのですね。ならば、私が手を伸ばすのは当然のこと。さあ、私と契約を。貴方の力となりましょう」

「結婚してください」

「はっ、へ!?」


あの時のなまえの度肝を抜かれたような顔は本当に忘れられない。白野も何を言っているんだ馬鹿なのか。正直衝動的に言っていたと語った白野はゲンドウポーズを決めていたから何も言えなかった。勝ったな。とか今やることじゃないんだよ馬鹿。


「私の父ですか?ええ、それはもう素敵な方です。ですが私の片割れは、少しヤンチャだったというか…。まさか父に歯向かうとは思いませんでした」

「なまえの片割れと言うと、モードレッドか」

「はい。私の大切な半身です」


本当に大切そうに、柔らかく笑うなまえは女の私でもちょっとクラっとくる雰囲気がある。白野、ヤキモチで歯軋りするのはやめておけ。


「ほぉう、そなたが余のマスターを射抜いたなまえか、ふぅむ」

「あの…?」

「…良い」

「?」

「実に良いではないか!」


キラキラとその端正な顔を輝かせてなまえの顔を覗き込むネロは、それはもう喜びの声を上げて彼女の手を取った。ふわりと揺れる赤と白は、私と白野の目を細めさせるには十分だった。ネロ、なまえ、尊い…。


「ええい、どこもかしこも余の好みの体型をしているだとぉ!?」

「え、あ、ふ、あははははっ!」

「これぞパーフェクトボディというやつだな!」

「くすぐった…っ、あはははっ!」


ネロの芸術魂的に何か触発される部分があったんだろうと勝手に認識しておく。その手によって笑い転げそうになっているなまえに助けはない。可愛いネロと、可愛いなまえが戯れることの目の保養といったら凄い。白野は手を合わせるな。昇天するな。アーチャーが慌てて口から出かけていた白い魂的なものを口に詰めていた。


「こら、ネロ」

「む、マスターか」

「なまえは俺のだから、だめ」

「白野様っ」


ネロの手からなまえを取り上げた白野は堂々とそんなことを言っていて、白野だけ早く爆発してくれないかなと私は思ったりする。玉藻も歯軋りやめなさい。ほら、こっちおいで。飛んできた玉藻の頭を撫でくりまわしつつ、まあ幸せそうならいいかと顔を真っ赤にさせて照れているなまえを見て笑った。


□二周年記念



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