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▼ ライアンは大人になれない

摩訶不思議、奇想天外な話をしよう。いや違う、仕事疲れとかそんなんじゃない。だからそんな悲しみに満ちた目をするのはやめようか。
夢の中で出会ったライアン君という金髪の少年が、何と現実へと具現化したのである。
とある大規模な事件にて、その被害に巻き込まれそうになった私を助けたのがライアン君なのである。夢見てんじゃねーよとかそういうツッコミいらない。確かに疲労はたまってたけどこれは紛れもない事実なのだ。


「疲れた…」

「おつかれ。付き合うか?結婚するか?それとも俺?」

「私の知ってる三択じゃない」


仕事から帰ったら笑顔で出迎えられた。アレおかしいな。私一人暮らしだし、しっかり出ていく時に鍵もかけたはずなんだけど。当然のように抱きしめられて戸惑いつつ背中を撫でてやる。私が知ってるライアン君はもっと小さくて泣き虫で可愛げがある子だったのに、年月というものがどれ程大事な事なのかを身をもって痛感させられる。あの夢で見た小さな少年が、大きくなってまさか求婚してくるだなんて誰も思わないじゃないか。


「安心しろよ、なまえを養えるだけの財力はあるぜ?」

「ヒーロー凄い。けど嫌です」

「何でだよ。傷物にした責任はとってくれるんだろ?」

「ちょ、なんて事言い出すのかなこの子は!私がいつどこでライアン君を傷物にしましたか!」

「俺が八歳ぐらいの時、公園で泣かされた記憶があるけどな」

「勘弁してください」


とんでもない事を思い出させる割に顔がニヤついてるんだよライアン君。私が夢だと思ってたアレはライアン君にとっては現実で、つまり私の精神みたいなものだけがタイムスリップしたのだと。子供を泣かせただなんて誰かに聞かれたら私の何かが色々と終わる。主に社会的に終わる。


「私が知ってるライアン君は八歳ぐらいの時だしね。結婚とかお付き合いとか無理でしょ、無理無理。私お縄につくよ」

「今となっちゃ問題ねぇ事柄だけどなぁ」

「ごめん年下には興味が…」

「だぁから、変わんねぇだろ」


額を指で弾かれて思わず睨んでしまう。けれどそれすらも面白いというように、ニヤニヤと口元を緩めているライアン君にため息がこぼれた。癖のある子に育ったなぁと思うのと、お母様の教育方針が間違ってんじゃないかと疑ってしまったり。額を抑えてそんなことを考えていれば、私の顔を覗き込むようにして背を丸めるライアン君と目が合った。前に見た時にも思ったけど、ライアン君すごく綺麗な目をしてるなぁ。


「俺の何が不満?」

「いや、不満とかじゃなくて」

「んー?」


首を傾げて尚も覗き込む体勢を変えないライアン君に口が開かない。頑張れ私のお口。今言わずしていつ言うというのだ。


「ワイルドタイガーの方が好みです」

「は?」


違うだろおおおおお!内心大絶叫である。もっとほかにも言うことあったよ私。違和感についていけないとか、ちょっとイケメン過ぎて耐性無いとか。確かにワイルドタイガーはカッコイイけどそれまでなんだよ!恋愛感情とか無いんだよ!ライアン君の方がずっとカッコイイよ!知ってる!


「あー、な、もういいから」

「え」

「全部、口に出てるから」

「埋まりたい」


気まずそうに後頭部へと手を伸ばして視線を逸らすライアン君は真っ赤になっていて。私はと言うと何を言われているのか理解した数秒後に頭を抱えたくなった。いつの間に私はこんなに頭が悪くなったのか。ちょっと仕事のやり過ぎかな。というかライアン君ものすごい可愛いな。キュンときたよ。


「結婚するか?」

「どうしてそーなるの?」


諦めるという言葉はライアン君にないのだろうか?赤い顔のまま言われても可愛いとしか思えないよ。


□二周年記念



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