▼ 緑茶の簡単なお仕事
突然緑の外套に視界を遮られることの驚きと言ったら凄い。どこから声が出たのかと言うような短い悲鳴に、ケラケラと聞こえる笑い声。見上げれば意地の悪そうな笑みを見せるロビンの姿。
「ロビン」
「可愛い悲鳴ですねぇ、マスター」
「なんという嫌味っ!」
脇腹を小突いても痛くなかったのか頭を撫でられた。そういうことをして欲しいんじゃねーんですよバカ野郎。思わず眉が寄るのが分かるも、それを見たロビンは気にした様子もなく半歩下がる。開けた視界に安堵しながら何がしたかったのかと首を傾げれば、肩を竦めて首を横に振ったロビン。いや、何も理由がないわけ無いでしょーよ。
「可愛い可愛いマスターを守るのもサーヴァントの役目でしてね」
「馬鹿にしてるな?」
「まさか。害ある虫から無防備ななまえを守るってのは案外大変なんですよ」
「害ある虫…?」
なんてこったい。そんな明らかに毒がありそうな虫からすらも守ってくれてるとは。ウチのアーチャーまさか凄く有能なのでは。いや、頼りになるのは知ってたけど、まさかそんなモノからも守ってくれてるとは思わなんだ。
「もういないの?」
「あー、まあ、俺から離れなきゃ大丈夫ですよ」
「くっついてて邪魔にならない?」
「こんな俺でいいならいくらでも」
ロビンの意地悪な笑みに馬鹿にされていると感じているものの、害のある虫に集られてしまうのは流石に怖い。お言葉に甘えてロビンから離れないように外套を掴めば、ごふっとロビンが咳き込んだ。どどどどうしたんだ敵か!?まさか害ある虫はロビンを狙っていたのか?なんて事。サーヴァントに頼りっぱなしのマスターでは駄目だ。私がロビンを守るんだ。ガクブルと震える両足はそのままにロビンをぎゅっとホールド。
「ああああマスターなにしてんすかっ!?」
「ロビンにこれ以上傷を付けるなぁぁぁ」
「何訳わかんないこと言ってんだよ、いいからサッサと離れろって!」
「今離れたらロビンが悪い虫に殺されるうううう」
うわぁぁぁぁと情けなくも叫びつつ、それでもロビンから離れないでいると顔が真っ赤になっていた。やっぱり毒がある虫かっ!いいやまだ間に合う!治癒の魔術を行使しつつ、ロビンを文字通り全身で守っていれば何故か今度はこっちがホールドされた。何をしているんだロビン!狙いは私じゃなくアンタなんだよ!
「ロビーン!私はいいから自分の身の心配をするんだぁぁぁ」
「クッソ馬鹿な子ほど可愛いってこう言う事かよ納得だわ!」
「頭まで毒されてるじゃないか!なんて事だ!」
「なまえが言う害虫と、俺の言ってる害虫は別モンなんですよ」
いいから落ち着けとぎゅっと抱き締められた。ぐえええ苦しいぃぃぃ。ロビンの背中をタップして息が出来ていないことを伝えれば少しだけ力が緩む。何故離さない。もしやまだ敵が。
「私の犠牲にならなくていいんだよおおお」
「落ち着けって」
「ロビンが居ないとやだよおおおお」
「あー、もー、なまえほんとっ、ほんといい加減にしろ」
「ロビーン」
「はいはい」
痛いぐらい抱き締められた。丁度いい体温で落ち着いたら急に眠気が襲ってきたので寝て、起きたらロビンが頭を撫でてくれた。よく分からなかったけどロビンが大丈夫そうなので安心した。
□二周年記念