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▼ 跡部と仲がいい子が気になる忍足

氷帝学園というのは所謂ボンボンの学校らしい。らしいというのは私が大して興味がないため、友人の言葉を借りたからなのだが。
「お坊ちゃんもお嬢様もいるとか何それ見てみたい!」と好奇心丸出しの友人に、最近見た中で一番強烈だったテニスコートに群がるお嬢様たちの写真を見せた。ら、かなりドン引きした顔で「私の想像してた金持ちの顔と違う」と言った。そりゃそうだ。何しろお嬢様方がとんでもなく危機迫ったような顔で応援している姿なのだから。
だからといって、学園のお嬢様方がみんなそうとは限らないのだ。これは該当していないお嬢様方のフォローのために言っているだけである。

氷帝学園の昼休みも終わりかけの屋上。そこで悠々自適に伸びをする私は学園一の不良らしい。数少ない私の理解者である友人が、私は不良だと噂が回っていると言っていたので確かなのだろう。
その不良である私が、それらしく授業をサボって寝ようとしている所に、耳に飛び込んできた女生徒の怒った声。幸い物陰に隠れて寝ようとしていた私の存在は気付かれていないらしい。そろりと様子を窺えばどうやら男女間の問題で揉めているらしい。青春だなぁ。
だがしかし、声を荒らげるのは頂けない。仮にもお嬢様でしょーが。仕方なく私はその場を収めるべく姿を出した。まあ言っても聞く耳を持たなかったので少しばかり手荒な事になったけれど、とりあえず場は収めた。


「といった経緯を元にして、一体全体どこら辺を好きになったんだろうね」

「ぜーんぶ好きや」

「ポーカーフェイス崩れてるぞ」


私の向かい側に座る忍足侑士はそんな事を言ってニコニコ嬉しそうに笑う。生徒会室で仕事を黙々とこなす跡部の言葉の通り、ポーカーフェイスとはほど遠いその表情。んん、女生徒の顔面蹴りあげた女のどこに惚れたんだコイツ。


「跡部、アンタのとこの部員は全員こんなんなの?」

「いや、そいつが特殊なだけだ。あとお前も何かしたんだろ」

「心当たりがございませんが?」

「もー、跡部ばっか見んと、俺もちゃんと見てや」

「ええ…、何この彼氏気取り。凄くうざぁい」


跡部に向けていた顔をグリッと頬を掴まれて忍足の方へと向けられる。何この人、我が強いってか我がままってか扱いづらい。じいっと見ていれば顔を赤くして照れたように視線を逸らして、女子かとツッコミたくなった。


「忍足で合ってるよね?」

「侑士って呼んでええで」

「ハハッ、名前で呼ぶの?冗談でしょ。そういうの鬱陶しい」

「んー、残念やなぁ。まあそれは追々な。なまえちゃんって呼ぶな?」

「いや、関わりたくないから呼ばないでいいけど」

「なまえ、暇なら手伝え」

「どの状況見て言ってんだ阿呆部」


それが所謂跡部なりの助けだと知ったのはすぐの事で、頭を抱えたくなった。私が馬鹿なのを知っててそんな遠回りに言ってきたんだったら跡部が悪いけど。


「なまえちゃんがな、あの女子生徒蹴りあげた時、すっごい綺麗な足してるなぁって思ったんよ」

「やだコイツどこ見てんの。跡部へるぷみー」

「今忙しい」

「スカートから見えた太股と言い、ふくらはぎのキュッとした丁度いい筋肉の絞り方と言い、ほんまドツボを突いてきてんねん。くるぶし辺りとかもう、堪らんわ」

「来いなまえ。そいつに今近付くな」


伸ばされた手に迷わず縋りつく。怖い怖い怖い。何なの忍足。ただの危険人物じゃないか、それかただの変態じゃないか。跡部の背後に回るようにして様子を伺っていれば、残念そうな顔をしている忍足の姿を確認した。


「跡部ずるいわぁ」

「うるせぇ。なまえはどうしようもない不良だが、お前みたいな変態が手ぇ出していい奴じゃねぇんだよ」

「なまえちゃんの父親みたいやで跡部」

「父親じゃねぇよ、コイツの彼氏だよ」


きょとりと目を丸くして跡部を見た忍足。ホントにこの人ポーカーフェイスファイターとか言われてんのかな。もういろんな顔晒してるんですけど。というか跡部も何ポロッとバラしてんの。跡部の評判悪くなるから黙っててって言ったじゃん私。


「跡部、言っちゃダメって言ったじゃん」

「あーん?いずれ全生徒が知ることだろ。好きな女を公表できねぇ俺の気持ち考えたことあんのか」

「いや、そこは跡部の評価に関わるんだから我慢してよ。あと約束破ったからお願い聞いてね」

「他人がつけた評価なんざいらねぇな。上等だ、何でも言ってみろ」

「跡部と美味しいパフェ食べたい」

「俺の彼女がこんなにも可愛い」


一通りの会話を終えて忍足へと視線を戻す。すると、忍足は突如立ち上がって私の前に立った。跡部が警戒してるから変なことは出来ないと思うけど怖いもんは怖い。とんでもない脚フェチの忍足は何を言うんだろうか。


「なまえちゃん」

「はい」

「二人目でもええから付き合ってくれん?」

「ざっけんな、忍足埋めるぞ」


忍足の真剣なその眼差しに苦笑いがこぼれる。忍足凄い、彼氏が目の前にいるのにこんな事言っちゃう図太さ。尊敬できるレベルだよ。しないけど。
あと言葉がどんどんと悪くなっていく跡部はきっと私の影響かもしれない。ごめんなさい、跡部のお父さんお母さん。


剋O万hit記念



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