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▼ 悩む青峰が閃いた

始めは自分の勘違いだろうと首を傾げるだけ。次第に聞こえてくる小さな笑い声に確信めいたものへ近づいて行き、自分が何かしたのかと純粋に疑問を持つようになった。引っ込み思案とか、言いたいことを言えないような性格でもない、むしろ活発なほうだと思うんだけれど、それが何処か皆の癇に障ったらしい。気付けば虐げられる対象になっていたなんて、完全に詰んだと苦い顔をするしかなかった。コレがまた暴力とかそういったものなら先生や親に相談できたけど、何と皆が揃いに揃って言葉攻めときた。ポンポンと出てくる精神攻撃に、お前ら将来SMクラブにでも入るのかと疑ってしまうぐらいの語彙力。こんな所でクラスメートの隠された能力は見たくなかった。


「だが許せん。誰の乳見て壁とか言ってんだクソ野郎」

「どう見ても壁だろ」

「煩いアホ峰。可愛い可愛いお友達が苛められてんだから慰めの一つぐらい言えよ。何傷に塩塗り込んでんの?」

「馬鹿にしてんのに斜面も何もねぇ壁だから反響して自分に返ってくんだぞ。そりゃイライラもするだろ」

「コルァ?誰が絶壁だぁ?あぁん?てゆーかいつまで乳の話してんだアホ峰」

「おっぱいは大事なことだろーが」


悪びれもせず言い切った青峰に盛大にため息をこぼしてやった。何故周囲の目も気にすることなく話しかけてくる奴がコイツなのか。こう、気の利く優しい人いたでしょ。無神経で雑でバスケ馬鹿の青峰じゃなく、いやこの際青峰でもいいから私に優しさをくれ。青峰が優しいとか恐怖しかないけど。


「なまえってよぉ、寂しいとか思わねぇの?」

「why?」

「少なからずお前が友達だって言ってた人間はあっさりお前の事なんか見限ったじゃねーか」

「言い方…」

「どうなんだよ?」


不思議そうに軽く首を傾げる割には、その顔はとても険しいもので、私も同じく首を傾げてしまった。そう言えばそうだなぁなんて振り返ってみる。
一番始めにイジメられたのは小学五年生だったと思う。物は無くなるは、掃除当番は一人でやらされるは、筆記用具を校庭に投げ捨てられる等など。当時の私にはそれはもう堪えた。泣いていたら青峰とさつきが助けてくれたのを鮮明に覚えている。
中学三年生の時には孤立した。話しかけても無視、近付けば避けられ、酷くてゴミを投げられたり等など。そんな時に傍に居てくれたのはやっぱり青峰とさつきだった。バスケが面白くないと言って愚痴る青峰に適当に相槌を打ちながら、内心一番バスケがしたい癖にとため息をこぼしたのはもう何度あったか分からない。
そうして今回、クラスメートがしてきたのは言葉攻めである。もう恒例行事みたいなものだろと諦めるのは仕方ないと思う。


「青峰とさつきが居てくれるじゃん?」

「…」

「どれだけ私がいじめられようと見捨てないでいてくれるし」

「なまえってよぉ」


仰ぐようにこちらを見た青峰に顔を向ければ、物凄く訝しげな顔で私を見ていて思わずたじろぐ。何だってんだバカヤロー。小っ恥ずかしい事喋ってんのは分かってんだよ。


「馬鹿だよなぁ」

「あぁん?」

「ホント馬鹿。ばーか」

「馬鹿に馬鹿って言われるって凄く屈辱的だ」

「そこが可愛い所だけどな」


頭イカレてんじゃないのかと思った私は間違いじゃないと思う。何でいきなり褒められたんだ私は。それとも馬鹿にしてるんだろうか。


「ま、お前はそのままでいろよ」

「は?なに?馬鹿にしてる?」

「違ぇよ」

「?」


笑う青峰が「分かってねぇんならそれでいい」と私の頭を撫でてきて、不服ながらも受け入れる。ハッキリとした理由は分からないけど、まあでも、青峰がそれでいいと言うんなら、私が何を考えるまでもないんだろう。


「にしても乳がねぇのは残念極まりねェけどな」

「殺すぞ」


前言撤回。やっぱり私の考える所、コイツは速やかに殺すべきだと思う。


□二周年記念
お前の世界は俺のモノ



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