▼ 毎日が辛い幼馴染コンビ
「研磨、おはよー」
「おはよ」
家を出たら五秒で幼馴染の眠たそうな顔が見えた。また夜遅くまでゲームしてたな!私も遅くまで携帯触ってたから人のこと言えないけど、研磨程眠くないのだ。朝はとても強いんだ。逆に夜は弱いけど昨日は頑張って起きてた!
「鉄郎は?」
「今日は先に行くって。昨日言ってたでしょ?」
「うーん?」
「…バカ」
ペチリと額を叩かれた。めちゃくちゃ優しい力加減だから全然痛くない!誤魔化すようにへへーと笑えば、研磨も小さく笑ってくれる。私の幼馴染はやさしーんだ!
学校が近付くにつれてどんどんと制服の数は増えていき、私たちもその中へと混ざり込む。逸れないようにと、研磨のゲームの邪魔をしないように服の裾を握った。私は落ち着きがないから研磨か鉄郎のどっちかの制服を掴んでいないといけないんだと。お母さんもお父さんも二人なら安心だなと笑ってたけど、私は毎日通ってる学校の道を間違えるほど馬鹿じゃないんだけどなぁ。
「はよ、なまえ、研磨」
「てつろー!」
「はいはい、今日も元気デスネー」
「…おはよ、クロ」
校門前で態々出迎えてくれた鉄郎に走って飛びつくも、難なく抱きとめられて凄いなぁと関心。私それなりに重いはずなのになぁ。抱っこの状態のまま欠伸をこぼす研磨と肩を並べて校舎へと入る鉄郎の姿はもう学校公認だったりする。おはよーなまえちゃん。今日も子守頑張れよー。孤爪ノート貸してー等など。かけられる声は様々だけど子守ってどういうことだ許さん。
「鉄郎下ろして聴き捨てならない言葉が聞こえた!」
「いつもの事だろ。後下ろしてもいいけど置いていくぞ」
「困る」
「なまえは落ち着いて。大丈夫だから」
研磨に大丈夫って言われたらもう何もかも大丈夫な気がしてきて鉄郎に身を預ける。もう文句は言わないからちゃんと教室まで送り届けてね!
遠くの方でリエーフが手を振ってるのが見えたから手を振り返しておく。わあ、笑顔も眩しいけど髪の毛の方が眩しい。ギラギラだねリエーフ。
「リエーフと俺、どっちが好き?」
「研磨!」
「うん。俺もなまえ好き」
「へへー、両想いだ!」
「クロどうしよう。心臓が痛い」
「具体的に」
「なまえと今すぐ家に帰って可愛がりたい」
「その前に勉学に励もうなー」
研磨の伸ばしてきた手を握りしめて笑えば、不良発言をぶち込んできた。まあそんな事を鉄郎が許すはずもなく、私と研磨は無事に教室へと送り届けられた。学生の本文は勉強なんだと。嫌な現実だぜ!
「鉄郎帰っちゃうの?」
「おう。ここ俺の教室じゃねーし、何より先ず俺二年生じゃねーし」
「えー、先生におねだりするから一緒にいよーよ」
「我が儘言わないの。研磨が居るだろ?」
「…研磨は居るけど鉄郎は居ないじゃん」
自分の教室へ戻ろうとする鉄郎の服を掴み止める。わしゃわしゃと髪の毛を混ぜるように撫でられても、私に誤魔化しが効くと思わぬ事だな。そんな事で私の気が緩むと思ったら大間違いだ。
「昼休みまで我慢、な?」
「休み時間は行っちゃダメなの?」
「研磨が着いてきてくれねぇだろ」
「馬鹿にするなよ!一人で行けるよ!」
「お前の場合絡まれるから気が気じゃないんデスヨ」
後ろから聞こえた研磨の「諦めて俺と一緒にいよう」発言に渋々ながらも頷いた。いいもんね!鉄郎は仲間外れにしてやるもんね!研磨と一緒にゲームするもんね!
「やっくん、今日も誘惑に負けずに耐え切った俺を褒めろ」
「耐えるも何も授業が始まった時点で先生に追い出されるからな」
「はー、あと一年遅く生まれてたらなー…」
「確かに可愛いけどそんだけ囲ってたらなまえちゃんに彼氏できないだろ」
「なまえに彼氏はまだ早い!!」
「ウザイ」
教室に戻った鉄郎と夜久くんの会話を知りもしない私は、呑気に研磨の背中に張り付きながら手元のゲームを観察してた。研磨凄い。指の動かし方が最早人間離れしてる。
□二周年記念