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▼ 姉さんだけど問題ないよな!続々

家がまさかの半壊状態から一ヶ月。あの後心のどこかで罪悪感があったのだろうギルガメッシュから家を丸ごと一軒プレゼントされた。貴方の財力は一体どうなってんの?株?もしかして成功した?
正直前の家よりもかなり広いし、父さんと母さんが帰って来たら卒倒しそうな程の家である。ローン無しで一括払いとか、本当にギルガメッシュの財力どうなってんの?


「しかも快適」

「俺も快適です」

「私のお腹がぷにぷにだって言いたいのか貴様」

「はあ〜、好きですなまえ」

「話を聞こうか」


人をダメにするクッションとやらに埋まる勢いで座っている私。その私のお腹に顔を埋めるディルが抱きついてきているのだけど、コイツ本当に話を聞かない。もうこれで三回フル無視されてる。
整えていたらしい髪を両手で少しだけ乱暴に撫でてやれば嬉しそうに笑う。うお、眩しっ。この反応も何度したかわからない。まあ学校から女の子を引き連れて帰って来るぐらいのイケメンだから仕方ない。お姉ちゃんは慣れてしまった。例えその女の子たちにどれ程憎々しそうな視線を貰っても、もうこれは仕方ないこととして諦めた。夜道は気をつけよう。


「なまえー!釣り行こ何やってんだ退けお前のもんじゃねぇだろ」

「ブーメランという言葉をご存知か御子殿」

「喧嘩駄目絶対」


ズバーンと扉を破壊するかの如く派手な登場だった。アロハシャツに黒のパンツ姿のクーが、満面の笑みから能面のような顔で語気を荒くさせたのにはお姉ちゃん震えたね。対するディルも視線だけでクーを威嚇してたけど。
また家を破壊されたらたまったもんじゃないと慌てて上体を起こせば、私が離れると思ったのかディルが私に回した腕の力を強くした。胃の中のものが出そうだから切実にやめて頂きたい。その様子を察するクーの紅い目が緩やかに細められる。ア、ヤバイ…。凡そ弟にする態度じゃない。


「ほーんと、なまえは昔っから面倒な男にばっか目ぇつけられるよなァ」

「え、何それ私知らない」

「…アンタは覚えてねぇから知らねぇだけだっつーの」

「御子殿っ、それ以上は」

「あー、ったく…。厄介なもんに捕まったよなぁ、なまえは」


言葉の大半が理解できないもので、首を傾げるしかできない。ディルは慌てたように顔を上げてクーを見るし、クーは不満そうな切なそうな顔でため息をこぼす。いやあの、私生まれてこの方モテ期とかそんなん来たことないんですけど?好きになる男性の殆どが何故か唐突に離れていったりするんですけど?弟達と比べて塩辛すぎる春しか送ってこなかったんですけど?


「何かよく分かんないけど、彼氏作ればいいの?」

「「違う」」

「えぇ…、そこ否定しなくてもいいんじゃない」

「なまえは本当に何もわかってない。そこは少しだけ、煩わしく思います」

「手の届く距離に生まれたんだ。みすみす他の奴に奪われてたまるか」

「お姉ちゃんは二人のその妙な結託感に時々恐怖を覚えてる」


二人して何を考えてるか分からない顔をして、私を見下ろしてきて何か分からないけど悪寒がする。思わず未だにお腹に居座るディルをぎゅっと抱きしめた。震えるなディル。お腹が揺れちゃうでしょーが。


「ああああああ、好きですなまえっ」

「なっ、テメッ、それはズリィだろなまえ!?」

「だだだだって二人が怖い顔するからっ」


まるで火が点いたように顔を赤くするディルのまあ暑いこと暑いこと。ゆたんぽみたいだ。クーは喚いてディルと私を引き剥がそうとするけど、ディル凄いの。全然離れない。
離れないディルに拗ねて不貞寝し始めたクーの頭を撫でてやったら、必死で口角が上がるのを耐えていた。何て分かりやすい弟達なんだ。


□二周年記念



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