■ 貿易にて

一週間のうち二、三日ほど私が牧場で採れた作物や乳製品、服飾品又は家具等などを貿易場にて出品している。無論、出品する物に手を抜くなんてそんな事は一切しない、プレゼントもそうだけど完璧なものを出品する。それが幸を成しているのか、翌日になる前には完売しているので驚きと共に満足だ。…クレームがあればまた一から作り直す所存である。


「お、なまえじゃねぇか!」

「ルフィ、帰ってたのか!旅はどうだった?」


貿易場に足を伸ばせば、彼のトレードマークでもある麦わら帽子が見えて声を上げてしまった。視線が集まった気がする。ほんとごめんなさい。私は注目されることに慣れていないというか苦手なのだ。
ルフィは気にせずこちらに走り寄ってきてニッと白い歯を見せて笑った。ああ、うん、眩しいほどの笑顔だ。


「今回はエースと南の方に行ったんだけどな、そこで気が合う奴がいてさ!」

「気が合う?」

「丁度そこで採れた特産物を出品すんの手伝ってくれるからさ、なまえも行こうぜ!」

「え、あ、ちょっ、ルフィ!」


待って待って待って、私が人見知りなのを理解してないのかルフィは。ほんと気を悪くさせてしまうぐらいの対応をしちゃうから勘弁してくれと言外に言っても、私の腕を掴んで構わずに奥へ進むルフィは気付かない。ああああああ…、ルフィ。君のその純粋さは時に私を苦しめるうううう。


「おーい、悟空ー!ナルトー!」

「おお、ルフィ!ちょうど飯にすっかって言ってた所だぞ!案内してくれ!」

「悟空は食い意地はりすぎだってばよ…。んん?ソイツは?」

「飯は美味い飯屋があるから案内してやる!んで、コイツが俺とエースが話してたなまえだ!この街の牧場主だぞ!」

「えっと、ルフィの紹介のとおりだ…。気軽になまえと呼んでくれ」


軽く背中を叩かれて前に出されれば挨拶するしかなかった。隣に並んでにししっと笑うルフィの服の裾をつかみながらどうにか笑って見せた。人見知りはこういう時辛い…。
裾が引っ張られているのに気付いたのか、ルフィは私の手を裾からルフィの手へと移らせる。温かいそれに正直安心した。


「ほー、こんなちっせぇ子が?スゲェなお前ェ。オラは悟空!よろしくな!」

「ルフィとエースから話は聞いてるってば!とにかくスゲェ牧場主がいるって!俺はナルトだ!」

「よ、ろしく…」


前のめりになってまじまじと観察するように見てくる二人に、内心ひきつった悲鳴を上げた。この人たちも整った顔してる。この街と世間にはイケメンか美女しかいないのか。
言い忘れていたがルフィはこの街に住む旅人である。兄二人と共に住んでいるのだが、兄達と街を飛び出してはいろんな所へと足を運び、その地域での特産物や珍しい物を街に持ち帰って出品して生計を立てているらしい。話に出てきたエースはおそらく受付に出品する品を書き出しているのだろう。もう一人、サボという兄がいるのだがルフィによればもうすぐ帰ってくるとのこと。別れて旅をしているとは珍しい。


「それで、悟空さんやナルトさんたちは何を出品するんだ?」

「オラは装飾品関係だなぁ。壊さねぇように持ってくんの大変だったぜ」

「俺は集めた食材でラーメン作るってば。なまえも後で食べに来てくれよな!」

「……私も負けてられないな」


今回私が出品するものは服飾品と料理関係である。これは売上が競われることになる。負けぬように苦手な声かけをしないといけないな。


「ルフィの所は、……ルフィ?」

「…なまえ、そいつらばっか構ってんなよぉ」

「え、あ、ああ、うん。ごめん?」

「俺のこと大事か?」

「当たり前だろう」

「……ん!許した!俺んとこはエースが出品してっから分からん!」

「…うん、そうか」


不機嫌な顔から一変して笑顔を浮かべるルフィに安堵の息をつく。ルフィは怒ると物凄く怖いんだ。何だっけ、覇気とかいう奴でぺちゃんこにされちゃうんだ。エースが言ってた。


「ルフィ、お前ぇすっげぇなまえの事大好きだなぁ」

「おう!俺の街のだーいじな牧場主だからな!」

「それだけじゃない気もするってばよ」


なにやらコソコソ話しているが丸聞こえなのだが大丈夫だろうか。それにしても街の大事な牧場主か。うん、これは非常に嬉しい言葉で、思わずニヤけてしまう。
そろそろ時間だとアナウンスがかかり、私は慌てて三人に一声かけてその場をあとにした。まだ準備は終わってないし、今日も手強い相手が多くいるので負けられない。



貿易にて、新たな旅人
(ちっちゃい牧場主だったよなぁー。オラ踏み潰さねぇか心配だったぜ)
(確かに悟空はデカイけどなまえはそこまで小さくねぇってば!)
(これ終わったら飯食いに行こうな!俺となまえと悟空とナルトの4人で!)