■ サファリにて

いつも通りの起床時間。ベッドから飛び降りて急いで顔を洗い身支度を整える。こうでもしないと私の眠気は去ってくれないのだ。
むつ丸ともち丸のご飯をセットして、私も朝食を食べながらテレビの天気予報をしっかりと確認する。今日も一日快晴のようだ。動物達も食物もよく育つ良い一日になりそうである。


「はよ、なまえ!ギルドからお手紙さ!」

「おはよう、ラビ」


自宅から出るとちょうどポストに手紙を入れようとしていたバンダナと眼帯が特徴的なラビの姿があった。歯を見せて笑うラビに礼を言って手紙を受け取り中身を確認。
『新しい野生動物を発見しました。是非見に来てください』達筆なその一文にテンションが上がった。顔には出ていないようで、ラビが不思議そうに手紙を覗き込んできている。


「ギルドに行くんさ?」

「うん、お呼ばれしたし気になるから。一通り仕事を終えてから行くことにする」

「了解。それ伝えといてやるよ、ギルドにも届けモンあるしな!」

「ありがとう」


ニッと笑って「じゃあな!」と走り去っていくラビに手を振ってその背が見えなくなるまで見送った。毎日郵便屋さんは大変だ、山を登らなければいけないのだから。…それについては本当に申し訳なく思っている。ごめんなさい。
先ずは動物達のブラッシングからだと気持ちを切り替えて動物小屋へ向かった。
出来る限り急いで仕事を終わらせたが、時刻は既に10時を回ろうとしている。ハヤブサに乗って急いで山を駆け下りながら、道中で掛けられた声にはしっかりと返していく。ごめんね、後でね!怒らないでね!内心これは失礼なんじゃないかとガクブル状態だ。


「あ、ユフィ。村長はどこにいるか知ってる?」

「ふふーん!なまえと言えども場所を教えて欲しくばマテリアを」

「はい、採掘場で見つけた」

「ヤッター!もうすぐ降りてくるから待ってるといいよ!」


ハイテンションでマテリアを手にしたユフィはそのままギルドから走って出ていく。マテリアと言う宝石なのだそうだ。私には価値があまり分からないからユフィに全部あげている。
ユフィの言葉通り、村長はすぐに一階降りてきた。


「来たね、なまえ」

「遅くなってすみません。新しい野生動物って何ですか?」

「フッ、相変わらず動物の事になると目の色を変える。見に行ってからの楽しみにしときな。ハヤブサは連れてきたね?」

「外で準備してます」

「よし、では行こうか」


この街の村長は幻海さんである。街なのに村長って何だと思ったけど、皆が気にしてないようなので私も気にしないことにしている。この人凄いんだよ。私の憑いてるって言う妖怪(?)を払ってくれたりしたんだよ。所謂霊能力者ってやつなんだと。おかげで体の調子は抜群である。弟子もいるらしいけど、今は修行に行ってるらしくって会ったことはない。修行を終えたら会わせてくれるらしいけど、何分私は人見知りのアンチクショーだからどんな粗相を仕出かすかわからない。会う時は気合を入れようと思う。
ハヤブサに二人乗りして数十分。私と村長は街から少し離れたサファリへとやって来た。ハヤブサから降りた瞬間にイタチとリスとスズメに突撃された。ごっふぅ、いいアタックだぜ。村長は分かっていたのかちゃんと距離を置いていた。助けてくれてもいいんじゃ…。
三匹の群れに餌をやって、村長の案内の元サファリの奥へと向かう。サファリにいる動物達からのアタック攻撃は餌をやることで気を惹かせることにした。好かれてるのは嬉しいけど痛いんだ…、イノシシは特に。


「ほれ、あれじゃ」

「わぁっ……!」


村長の指さす先にいたのは真っ白な小虎であった。初めて見るその動物に走って駆け寄ろうとしてグッと踏みとどまる。可愛いけど怯えさせてはダメだ。初めて来た時に全野生動物から全力で逃げられたことは今でも覚えてる。心が痛かった。
こちらを警戒心MAXで見てくる小虎に視線を合わせるようにしてその場に正座する。そうして自分のできる最大限の笑顔を浮かべてみた。正直かなり引きつった笑顔だと思うけど、敵対心はないのだと自身から少し離れた所へ餌を置く。ちなみに餌を用意してくれたのは村長だ。


「ね、怖くない」


某映画の風の谷の主人公の名台詞を言ってみた。小虎が恐る恐るだけどこっちに寄ってきた。きゃぁぁぁ!!!可愛いいいいいい!!!
正直初めて見る動物で、しかも向こうから寄ってきてくれたことにテンションは鰻登りである。
餌を食べる小虎にデレデレしながら頭を撫で、私は小虎を抱き上げる段階まで構い倒した。気付いた時には私の周りはサファリにいる動物に囲まれていて内心歓喜の悲鳴を上げた。
呆れた様子でそろそろ帰るぞと村長に言われて、我に返った時には既に夕方である。やべぇ、ハヤブサ怒ってそう。名残惜しく小虎を放して村長と共にサファリを後にした。正直背後から聞こえてくる小虎らしき鳴き声に泣きそうになった。明日も来るからそんな声ださんといてっ!



サファリにて、野生動物と戯れる
(朝一番になまえ見れたさぁ〜。今日は一日ツイてるさ!)
(どーよ!これがなまえに貰った私のマテリアコレクション!)
(…ふむ、この隠し撮りした写真を売ればいい値段になりそうじゃな)